★WINTER WONDERLAND★
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Angragard / The Crimson Projekct @ クラブチッタ川崎(15 Mar 2013)
2013年04月04日 (木) * 編集
トニー・レヴィンのファンです。

プログレでなくてもいい。むしろ歌もののバックで弾いている時のほうが好きだったりするのですが、これからそう何度も観られそうにないので、機会があれば足を運ぶようにしています。ちなみに過去には90年のABWH公演、94年のPeter Gabriel公演、95年のKing Crimson公演などで観ています。昨年のPeter Gabriel "SO" 再現ツアーはぜひ来日してほしかったのですが… それはさておき。

この夜はキング・クリムゾンではなくクリムゾン・プロジェクトとしての来日。加えて、スウェーデンのアングラガルドがスペシャル・ゲストとして演奏するということで、期待が高まりました。90年代にデビューしたいわゆるクリムゾン・フォロワー的な北欧プログレバンドです。当時よく一緒に語られていたアネクドテンが今年1月に来日したばかりですが、両者が長い時間を経て同じ年に来日することになるなんて、不思議な因縁を感じなくもありません。


アングラガルド

メンバーは次のとおりです。ギタリストがリーダー的な存在のようでした。

 Tord Lindman (Vocal, Electric Guitar)
 Anna Holmgren (Flute, Tenor Saxophone, Keyboards, Recorder, Melodica)
 Johan Brand (Electric Bass, Bass Pedal)
 Linus Kase (Keyboards, Curved Soprano Saxophone, Chorus)
 Erik Hammarstrom (Drums, Glokenspiel, Vibraphone, Tubular Bells)

全6曲で70分という奔放すぎるセットリストにも驚きますが、演奏能力の高さと独自の世界観の表現にひたすら圧倒されました。ステージ中央に鎮座する白い本物のメロトロンと、デジタルのメロトロン音とを上手く重ねる工夫には「その手があったか」と膝を打ちました。

全員腕の確かなメンバーで、見るからに相当練習している様子でしたが、特に目を引いたのはキーボーディスト。ピアノ、オルガン、メロトロン、エレピを四方にセッティングして忙しく動きながら弾き分ける姿は、例えばジョーダン・ルーデスが1台で全部こなしちゃうのとは対極のアナログ的な手法です。しかも曲によってはソプラノサックスまで吹いちゃったりして、まったく目が離せない。

しかし楽器の持ち替えといえば、紅一点のアンナ・ホルムグレンさんの方がすごかった。フルート、テナーサックス、リコーダー、メロディカ(鍵盤ハーモニカですね)に加えて、メロトロン等の鍵盤も弾き、さらには赤風船を膨らませてその空気が漏れる音で演奏(!)したり。大柄で、しかも妙齢とは言い難い雰囲気ですが、女性が視覚的に中央付近にいるプログレバンドは多くないので、大いに差別化要因になりますね。

楽曲の起承転結は、少なくとも1回聴いただけで頭に入る感じではないのですが、北欧独特の静謐かつ幽玄な雰囲気と、静と動の間を行き来する展開が好きなお方なら猛烈にハマる音楽だと思います。

【Angragard セットリスト】
1. (新曲)
2. Hostsejd
3. Langtans Klocka
4. Jordrok
5. Sorgmantel
6. Kung Bore




クリムゾン・プロジェクト

諸事情により「キング・クリムゾン」の名が使えないものの、実態としてはエイドリアン・ブリューとトニー・レヴィンの80年代クリムゾンを核としたダブル・トリオです。

 Adrian Belew (Vocal, Electric Guitar)
 Tony Levin (Chapman Stick, Electric Bass, Chorus)
 Pat Mastelotto (Drums)
 Markus Reuter (Touch Guitar)
 Julie Slick (Electric Bass)
 Tobias Ralph (Drums)

観ての率直な感想は「エイドリアン頑張ってるなあ」というもの。
だってもう63歳ですよ。それがこんなに元気そうに楽しそうにギターを弾きまくり、伸びのある声で歌いまくるのです。これまでで一番調子がいいんじゃないだろうか。観る度に違和感を感じていた自分ですが、なぜか今回はすっと入ってきて、すっかりファンになってしまいました。ロバート・フリップもビル・ブルフォードもいない状態で客観的に見て初めて分かることなのですが、これってやはり根本的にエイドリアンのバンドなんですよね。好き放題、に見えるかもしれませんが、実は彼のコントロールがよく効いています。

トニーはといえば、相変わらず素敵でした。
大きく脚を広げてスティックを構えるだけで、こんなに絵になる男がいるでしょうか。その両手から繰り出される "Elephant Talk" のイントロのリフは、もうこのまま永遠に続いてほしいと思うくらいに素晴らしい。"Sleepless" や "Thela Hun Ginjeet" では人差し指と中指に棒をつけて弦を叩く「ファンク・フィンガーズ」奏法で高速かつ芯の太いベースサウンドを聴かせてくれます。今回嬉しかったのは、エイドリアンと随所でハモるコーラスがとてもクリアに聴けたこと。トニーのヴォーカルをこんなに堪能できるなんて。

意外な収穫はパット・マステロットでした。
95年はビルばかり観ていて、パットはぱっとしないなあ…と思っていたものでしたが、あれから20年近く経ち、すっかりプログレ畑の人になってしまったパット・マステロットの力強くも変幻自在なドラミングに魅せられました。数週間前に元Mr. Misterのリチャード・ペイジを観たばかりですが、これではたとえMr. Misterが再結成するとしても、ドラムをお願いできる状態ではないですね。ちょっと音圧と手数が違いすぎる。

毎晩セットリストが変わっていて、この夜は「太陽と戦慄パート2」を演奏しませんでした。それだけが心残りですが、いずれにせよ観てよかったと素直に思えるライヴでした。

【The Crimson Projekct セットリスト】
1. Red
2. Dinosaur
3. Sleepless
4. Elephant Talk
5. Three of a Perfect Pair
6. B'Boom
7. THRAK
8. VROOOM VROOOM
9. Neurotica
10. Indiscipline

-Encore-
11. Frame by Frame
12. Thela Hun Ginjeet

Sheena Easton @ビルボードライブ東京(13 Mar 2013)
2013年04月03日 (水) * 編集
シーナ・イーストンの来日公演を観てきました。3月13日(水)のビルボードライブ東京、セカンド・ステージです。残念ながらお客さんはちょっと少なめでした。バックバンドは次のとおり。

 Tony Q:Saxohone
 Dave Hart:Guitar, Vocal
 Dan Ellis:Keyboards
 Earl Campbell:Drums
 Phillip Ingram:Vocal

定刻を少し回って照明が落ち、Sylvester のディスコ名曲 "You Make Me Feel (Mighty Real)" に乗ってシーナが登場します。丈が短めの緑のラメドレスに黒のピンヒール。ひょっとして生脚かな? 拍手に迎えられて歌い出したのは、Chaka Khan のカヴァーで有名な Prince 作の "I Feel For You"。バンドもほぼ黒人で固め、いきなりR&B色の濃いオープニングになりました。ハーモニカ・ソロはギタリストが担当。スティーヴィー・ワンダーばりという訳にはいきませんが、なかなか上手いですね。

The Lover in Meそれにしても、もうシーナも53歳。全体に相当ふっくらしており、特に脚はかなりぷっくりですね。ドレスからこぼれそうな胸の大きさにもびっくりしました。声は少々しゃがれ気味ですが、そこそこに出ています。1曲終わって「セカンドショーよ!」と自分に気合を入れるように声を出していたのが妙に印象的でした。セクシー&ダンス路線の "The Lover in Me" を歌ったところで、「カフェイン取らなくちゃ」とマグカップでコーヒーらしきものをごくごく飲んでました。

ここでMCタイムなのですが、イヤリングを落としてしまい「いいのいいの、フェイク・ダイヤモンドだから。フェイク・ティファニーよ」とケラケラ笑いながら、拾わずに(というか体型とタイトなドレスでかがめなかった…)足でスタッフの方に蹴ったのにはちょっとびっくり。MCも「今夜は80年代、90年代の曲をたっぷり歌うわよ。なんたって、2000年代にはヒット曲がないんだから!(笑)」などと自虐モード全開でしゃべりまくり、何だかいい感じにスコットランドのおばちゃん化したシーナに、驚きつつも新たな魅力を見出すことになりました。

「そうそう、もちろんバラードもね。この歌の歌詞は実話なのよ」と言って彼女が歌いだしたのは、個人的に最も好きな "Almost Over You"。名邦題『哀しみ色に染めて』のイメージそのままに、深く感情移入して歌い上げるシーナに惚れ直しました。この1曲だけでも観に来た甲斐があったというものです。さらに「次はスタンダードをカヴァーした No Strings アルバムからの曲よ。多分この会場で4人くらいしか買ってくれてないと思うけれど、私はとても好きな作品なの」と言って歌った "How Deep Is The Ocean"。場末のクラブ感がかすれた声に絶妙にマッチしていました。サックスソロも素敵。このアルバム、アレンジはパトリース・ラッシェンなんですよね。

ここで雰囲気をがらりと変える "Strut"。一気に80年代前半の派手なサウンドに戻った後は、スツールに腰掛け、アコースティックギターの伴奏で2ndアルバム収録の名曲 "You Could Have Been With Me" を。1stで成功して2ndのプロダクションはビッグになりすぎたけれど、装飾をそぎ落として楽曲の核心に迫ってみたいとのことで、しんみりと聴かせてくれました。

Private Heaven「来月で54なのよね~。80年代のセクシーすぎる曲を歌うにはもう歳だから、今のうちにやっとかないと…」とか言いながら、"U Got The Look" と "Sugar Walls"(大好き!)をメドレー形式で歌います。前者はご存知プリンスとのデュエット曲ですが、ここでコーラスのフィリップ・イングラムが前に出てきてシーナと絡みます。実は知らなかったのですが、彼はあのジェームズ・イングラムの弟で、70年代後半のファンクバンド Switch のメンバーでもあるんですね。道理で上手いわけです。"Sugar Walls" もプリンス作のお色気ナンバーですが、セクシーな語尾上げには熟女ならではの妖しい魅力も。さらに "The Glamorous Life" のフレーズや各メンバーのソロ回しも交えて大いに楽しめるセクションになりました。

続く「愛・ひととき」("We've Got Tonight")では、一転してシーナとフィリップがシリアスなデュエットを聴かせます。ケニー・ロジャース版とも、オリジナルのボブ・シーガー版とも異なる深みを感じさせるフィリップに、澄んだハイトーンで絡むシーナが印象的でした。ここでメンバー紹介、さらに "Telefone" で畳み掛けます。アップテンポで盛り上がる曲ですが、歌い終わったシーナのMCは「今じゃ意味ない歌よね~。メールしちゃえばいいんだから」。確かにそうなんだけど…。

キーボードのみの伴奏で "When He Shines" を歌い上げたあとは、「フィリップや私たちの世代はモータウンを聴きながら育ったの。これは私なりのトリビュートよ」としゃべってフィリップ・イングラムと "Ain't Nothing Like The Real Thing" を歌ってくれました。途中で "You're All I Need To Get By" とマッシュアップしましたが、いずれもマーヴィン・ゲイとタミ・テレルのデュエットで、ソングライターはアシュフォード&シンプソンです。シーナのルーツにモータウンがあるとは全然意識してませんでした。でも確かにすごく彼女に合っている。そういえばライヴ前に会場に流れていたのはスティーヴィー・ワンダーのアルバム Songs in the Key of Life じゃなかったかな?

…なんて考えていたところに、初期の大ヒット "9 To 5 (Morning Train)" が来ました。こうして聴くと、モータウンっぽさを感じなくもないですね。会場も手拍子で盛り上がります。そしてまたまた大ヒットの007ナンバー "For Your Eyes Only"。まさしく彼女のためにあるような名曲だといつも思うのですが、生で聴くと一層深く感じるものがあります。

そしてアンコールはデビュー曲の "Modern Girl"。結局ここに帰ってくる、というわけです。いろいろなジャンルにチャレンジして、表現者としての枠を広げてきた彼女ですが、あまりにも鮮烈だったこの曲を、そしてこの曲に惚れたファンたちを大切にする気持ちが伝わります。歌いながら最前列のお客さんと一人ひとり握手して、満面のスマイルでお辞儀をしてステージを降りました。

80年代のアイドルだった彼女が、50代半ばになった今もこうして日本でファンに温かく迎えられている様子を目の当たりにできて、何だかとても幸せでした。自分自身、ティーンエイジャー時代に好きだった曲をたくさん生で聴くことができたわけですが、こんな機会はいつまでもあるわけではないでしょう。観られるうちに観ておかないと、という気持ちを強くした夜でした。


【セットリスト】
1. I Feel For You
2. The Lover in Me
3. Almost Over You
4. How Deep Is The Ocean
5. Strut
6. You Could Have Been With Me
7. U Got The Look / Sugar Walls
8. We've Got Tonight
9. Telefone (Long Distance Love Affair)
10. When He Shines
11. Ain't Nothing Like The Real Thing
12. Morning Train
13. For Your Eyes Only

-Encore-
14. Modern Girl

Journey @ 日本武道館(11 Mar 2013)
2013年04月03日 (水) * 編集
ジャーニーの4年ぶりの来日公演を、彼らにとって30年ぶりとなる日本武道館で観てきました。2004年に東京国際フォーラムでスティーヴ・オウジェリー在籍時のライヴを観ています(⇒レポート)が、自分にとってはそれ以来となります。

前座はジョナサン・ケインの娘 Madison Cain と、ニール・ショーンの息子 Miles Schon による Madison Cain & Miles Schon でした。親の七光り以外の何ものでもない彼らですが、武道館の舞台に立てたことに敬意を表してか、チープ・トリックの「甘い罠」で幕を開けたのは粋な演出。オリジナル曲はもう一歩の出来でしたが、アデルの "Rolling In The Deep" のカヴァーは、大柄な Madison の声質にも合っており悪くない出来だったかな。2人には忘れ難い思い出になったことでしょう。

さてジャーニーはといえば、日本公演初日、WOWOW生中継、超満員の日本武道館と、あらゆる条件が揃って緊張感がみなぎる中、我々の期待に約2時間の『グレイテスト・ヒッツ』選曲・演奏で応えてくれました。オープニングの "Separate Ways" からアンコールの "Be Good To Yourself" まで、次々と繰り出される名曲、ヒット曲の数々。アーネル・ピネダ加入後の楽曲が一切なしというのは、個人的にはちょっとどうかなとも思うのですが、ここはやはり思いきったセットリストを評価します。

エスケイプ(紙ジャケット仕様)ほとんど全曲、武道館のオーディエンス全員で歌いまくりだったわけですが(特に "Separate Ways" から "Any Way You Want It" にかけての流れはすごかった)、個人的にはアルバム ESCAPE のタイトル曲が嬉しかった。産業ロックのフォーマットに乗りながら、やや複雑な展開も見せる楽曲で、リズムのキメなど聴かせどころ満載の大好きなナンバーです。"Who's Crying Now" や "Stone in Love" の終盤でのニール・ショーンのギターソロもいつもどおり泣き泣きで、思わずエアギター。

初めて観るアーネルは、実に元気にショウを盛り上げてくれました。小さな彼がステージをところ狭しと走り回り、スピーカーに駆け上っては僕らに手を振ってくれ、そして高くジャンプして飛び降りる。ヴォーカルも安定していて、ややかすれ気味でしたが高音部の不安がほとんどないので安心して聴いていられます(オウジェリーではそうはいかなかった)。"Faithfully" での感情の込め方には思わず引き込まれました。

恒例のリードヴォーカル交代は2曲。まずは "Keep On Runnin'" でディーン・カストロノヴォが叩きまくりながら歌います。これがまた巧いんだよね~。そしてディーンとジョナサン・ケインが "Just The Same Way" を歌います。これらはほぼ定番の持ち歌になっているようですが、もっと他の曲も聴いてみたい。さらに言うと、ロス・ヴァロリーの歌も聴きたかった。実は今回、ステージを観ていて一番素敵だったのはロスの渋すぎる存在感でした。

ジャーニーはニールの派手なギターと、スティーヴのハイトーンなヴォーカルが2大看板になっていて、そこにジョナサンのピアノかシンセが味付けをする造りの曲が多いので、どうしてもリズムセクション、特にベースは相対的に地味な位置にあります。でも聴けば聴くほどに、よく練られたベースラインとコーラスで、ロス・ヴァロリーがボトムをがっちり固めているんですよね。そして "Who's Crying Now" や "Don't Stop Believin'" のイントロでは、ピアノと絡む独特の音色のベースが重要な役割を果たしています。普段は飄々としているロスが、特にこの2曲では真剣な表情でイントロを弾いていたのが印象に残りました。

その "Don't Stop Believin'"。もちろん昔から聴く者に力をくれる名曲でしたが、ここ数年はドラマ「GLEE」で印象的な使われ方をしたことで、若い世代にも広く知られるようになりましたよね。この夜もそんな若者たちの姿を何人も見かけましたが、3.11の地震と津波で被害を受けた方々に捧げる形で演奏されたこの曲を、武道館にいたほぼ全員が割れんばかりの大合唱でアーネルと共に歌い上げたあの瞬間のぞくぞくするような感覚は、きっと一生忘れないと思います。素敵なライヴをありがとう!


【セットリスト】
1. Seperate Ways
2. Any Way You Want It
3. Ask the Lonely
4. Who's Crying Now
5. Only the Young
-Guitar Solo-
6. Stone in Love
7. Keep on Runnin' (vocal: Dean)
8. Edge of the Blade
9. Faithfully
10. Lights
11. Stay Awhile (acoustic)
-Keyboard Solo-
12. Open Arms
13. Just the Same Way (vocal: Jonathan)
14. Escape
15. Dead or Alive
16. Wheel in the Sky
17. Don't Stop Believin'

-Encore-
18. Be Good to Yourself

Ringo Starr & His All Starr Band @ ZEPP東京(26 Feb 2013)
2013年03月08日 (金) * 編集
今年3本目のコンサートは、なんと洋楽を聴き始めて約30年にして初めてのビートルズ体験になりました。

これまで、ジョージ・ハリスンもポール・マッカートニーも観る機会があったはずですが、肝心のビートルズ自体に深い思い入れのない自分にとって彼らは「過去の人たち」。どうしてもビートルズというだけでは会場に足を運ぶところまでいかなかったんですよね。

ところが今回のリンゴ・スター・バンドは、非常に自分のツボを突いた人選になっており、これならバックバンドを観るだけでも安いと思わせてくれました。そんなわけで、決して元ビートルを観に行ったわけではないのですが、結果としてとても素晴らしい時間を過ごすことができました。

ちなみにメンバーは次のとおり。

Ringo Starr
Todd Rundgren
Steve Lukather (TOTO)
Gregg Rolie (Journey, Santana)
Richard Page (Mr. Mister)
Mark Rivera
Gregg Bissonette

リンゴさんは来日直前、日本のファンにこんなメッセージを届けてくれました。



以下、順不同で感想をメモします。


リンゴ・スター

お人柄なんだろうと思いますが、現れた瞬間に幸せのオーラみたいなものがステージ全体に溢れるのが感じられます。"It Don't Come Easy" のリズムに合わせて、満面の笑みで身体を揺らしながら両手でピースサインを掲げる彼を目にすると、それだけで何かを信じられるような、誰もを愛することができるような、そんな不思議な力が湧いてきました。

声もよく出ていましたし、ドラムスも、お茶目なMCも素敵でした。"Don't Pass Me By" ではピアノの弾き語りもやってくれましたね。ソロの代表曲あり、新曲あり、そして何といってもビートルズナンバーでの会場一体となった大コーラスには鳥肌が立ちました。「伝説」の一端に触れることができて幸せです。


トッド・ラングレン

以前にもビートルズのトリビュートツアーで来日したのを観たことがありますが、今回も相変わらずの怪人ぶりでした。ラメの派手派手なスーツの下に蛍光黄緑のワイシャツといういでたち。本来いくらでもシリアスになれる人だと思うのですが、パーティの時はとことん盛り上げ役に徹するタイプですね。

"I Saw The Light" は大好きなので、聴けてよかったです。周りでも結構歌っている人たちがいました。本当にチャーミングな曲ですよね。あとは "Can We Still Be Friends" を歌ってほしかったところですが、それはまた次の機会のお楽しみにとっておきましょう。


グレッグ・ローリー

元Journeyの、というよりこの夜は元Santanaのグレッグ・ローリー。なんと Santana の1st、2nd、3rdから1曲ずつ演奏するという嬉しい選曲。ウッドストックの生き証人たちを観られるチャンスはだんだん最後に近づいていると思われますが、まさか2013年に初期サンタナのキーボードを生で体験できるとは思いませんでした。

ヴォーカルも渋くて良かったのですが、何といってもハモンドオルガン。噴き出すようなサウンドに酔いました。あとは初期 Journey の楽曲をやってくれたら最高だったのですが、それは無理なお願いというものでしょうね。


リチャード・ペイジ

個人的に最も期待していたのが元 Mr. Mister の彼。80年代に一世を風靡した彼らですが、このまま二度と観られないのかなと半ば諦めていました(ドラムスのパット・マステロットはキング・クリムゾンで何度か観てますけど)。

細身の身体に高い位置でベースギターを構えて指で弦を弾く姿は、ラッシュのゲディ・リーにも少し似ているような。透き通ったハイトーンのヴォーカルに衰えはほとんど見られず、期待通りに2曲の全米#1ヒット "Kyrie" と "Broken Wings" を聴かせてくれました。本当にカッコよかった! これだけでほとんどチケット代の元は取れたと思います。

コーラスでも大活躍していましたね。




スティーヴ・ルカサー

TOTOのスタジオ盤は基本的にどれも好き(特に4枚目)ですが、なぜかライヴで観るといつも微妙な違和感を感じてしまうルカサーさん。弾きまくり過ぎるからかな? 今夜のメンバーの中で最も日本語の発音が上手だったのは間違いないでしょう。

"Rosanna"、"Africa"、"Hold The Line" の3曲というのもちょっと。盛り上がる最大公約数的な選曲なんだろうと思いますが、せっかくなら意外な曲をやってみたら面白かったのに…などと、どんどん愚痴になってしまうのでここまで。

サンタナ楽曲でカルロスになりきって弾いてくれたのは流石でした。やっぱり巧い人です。


マーク・リヴェラとグレッグ・ビソネット

マークさんはサックスプレイヤーですが、パーカッションも叩くしコーラスもするし(特にTOTO楽曲でのボビー・キンボールのパート!)、大忙しの仕事人。グレッグ・ビソネットはデイヴ・リー・ロスのバンドでの派手なプレイが印象的でしたが、この日はあくまで淡々と裏方に徹していました。特にリンゴとツイン・ドラムスになる時には必ずリンゴを視界に入れた状態で叩いており、リズムをぴったり合わせていたのが素敵でした。


終わりに

それにしてもリンゴ・スターの出番での、会場を埋め尽くすピースサインには圧倒されました。後ろの方から観ていたので、オーディエンスから一斉に手が挙がる様はひたすら壮観。自分もまさに全身、Peace & Love に包まれました。

まだほとんどビートルズを聴いていないという事実は、ある意味幸せなことかもしれません。これからじっくり登っていくべき、どこまでも高く美しい音楽の山々が目の前にそびえ立っているということでもあるのですから。



【セットリスト】

1. Matchbox (Ringo Starr)
2. It Don't Come Easy (Ringo Starr)
3. Wings (Ringo Starr)
4. I Saw the Light (Todd Rundgren)
5. Evil Ways (Gregg Rolie)
6. Rosanna (Steve Lukather)
7. Kyrie (Richard Page)
8. Don't Pass Me By (Ringo Starr)
9. Bang the Drum All Day (Todd Rundgren)
10. Boys (Ringo Starr)
11. Yellow Submarine (Ringo Starr)
12. Black Magic Woman (Gregg Rolie)
13. Honey Don't (Ringo Starr)
14. Anthem (Ringo Starr)
15. You Are Mine (Richard Page)
16. Africa (Steve Lukather)
17. Everybody's Everything (Gregg Rolie)
18. I Wanna Be Your Man (Ringo Starr)
19. Love Is the Answer (Todd Rundgren)
20. Broken Wings (Richard Page)
21. Hold the Line (Steve Lukather)
22. Photograph (Ringo Starr)
23. Act Naturally (Ringo Starr)
24. With a Little Help from My Friend (Ringo Starr)
25. Give Peace a Chance (Ringo Starr)
Angela Winbush / Cherrelle / Alexander O'Neal @ ビルボードライブ東京(11 Feb 2013)
2013年03月06日 (水) * 編集
Level42に続いてビルボードライブ東京で今年2本目のコンサートを観てきました。

かつてブラック・コンテンポラリー(ブラコン)と呼ばれたジャンルがありました。今でいうR&Bとも、それ以前のソウルとも異なる、80年代前半の独特のサウンドです。今回はその「ブラコン」を象徴するような3人のアクトによる、夢のような競演となりました。何とアンジェラ・ウィンブッシュ(Angela Winbush)、シェレール(Cherrelle)、アレクサンダー・オニール(Alexander O'Neal)の揃い踏みです。


アンジェラ・ウィンブッシュ

Angela Winbush18時を少し回って客電が落ちると、まずはアンジェラ・ウィンブッシュのステージ。結論から言えば、これがあまりにも凄すぎました。Usher の "Yeah" のフレーズに乗ってステージに現れた彼女は、かつてのジャケット写真より豊満になってはいたものの、一たび歌い出せばその声の太さと存在感にぶっ飛ばされます。

1曲目は Rene & Angela 時代(85年)の "I'll Be Good"。いきなりの大ヒット曲に1階席のお客さんもどよめきます。アンジェラも最前列のお客さんの帽子を奪ってかぶってみたり、オーディエンスを巻き込んで盛り上げます。

2曲目は87年のソロデビュー作から、バラードの "Angel"。女性コーラスがしっとりと絡む中、アンジェラの伸びのいい高音が炸裂。最近はアルバムも出していなかったようですし、聞いたところでは乳がん闘病もしていたらしいのに、この現役感といったら。最前列の男性をステージに上げ、自分の背面に密着させて抱かせたり、正面からハグして彼の顔を胸の谷間に押しつけたりと、エロティックな演出に会場が沸きます。

再びルネ&アンジェラのアルバム Street Called Desire からミディアムスローな "You Don't Have To Cry" と "Your Smile" を続けざまに披露、1月に58歳になったとはとても思えない若々しさとパワーに圧倒されっぱなし。そして "I've Learned To Respect (The Power of Love)" へ。Stephanie Mills の全米R&B#1ヒットとしては知っていましたが、この曲を書いたのがアンジェラ・ウィンブッシュだったんですね。ゴスペル風に盛り上げる感動的な歌唱。

感動が頂点に達したところで、一転してアップテンポの "It's Alright" へ。会場を総立ちにさせてノリノリの聖歌隊に変えてしまいます。全員で「ハレルヤ!」のコール&レスポンス、お見事としかいいようのない40分間のマジックでした。本当に素晴らしい!

【Angela Winbush セットリスト】
01. Intro
02. I'll Be Good
03. Angel
04. You Don't Have To Cry
05. Your Smile
06. I've Learned To Respect (The Power Of Love)
07. It's Alright




シェレール

Right Timeアンジェラが退場すると、休む間もなくすぐにシェレールが登場します。ちなみにバンドはアレックスのステージまでぶっ通しで演奏。左からキーボード、ギター、ドラムス、ベース、キーボード、女性コーラス2人で、特に女性陣(Shunta Lee & Candace Ashir)の丁寧なサポートはショウのクオリティを高めていました。このうち Candace は Candy Fox という名前でも活躍しているみたいですね。

シェレールは… なんと右足を傷めてしまったとかで、痛々しくギプスで固めた姿。しかし元気は十分、ステップも踏むしジャンプもするし、ハスキーな高音ヴォーカルを張り上げながら、音が割れそうなすごい声量で歌いまくります。マイクは要らなかったんじゃないかと思うくらい。そういえば確かに綾戸智恵さんに似てますね。小柄でキュートで、時にしゃがれるパンチの利いたシャウトもあったりして。

代表曲のオンパレードで、ジャム&ルイス全盛期の珠玉のナンバーを再現してくれました。傑作アルバム Affair のタイトル曲ではジャネット・ジャクソンの "What Have You Done For Me Lately" のフレーズをブレイクに挟む遊び心もあり。世が世ならジャネットではなくシェレールが天下を取った可能性もあったと思いませんか?

個人的に嬉しかったのは "I Didn't Mean To Turn You On"。ロバート・パーマーがカバーして全米2位にしたことで知った曲ではありますが、やはりオリジナルはかっこ良すぎ。超クールなのにどす黒い熱さにまみれたファンクが会場を煽り、躍らせてくれました。ほとばしるパワーにひたすら感動。

ここでちょっとブレイク。会場に向かって「ビヨンセ好きな子いない?」と呼びかけます。手を挙げた女の子を無理やり引っ張ってきてステージに上げ、有無を言わせずバンドが "Crazy in Love" のフレーズを演奏開始! 誰の目にも明らかに大きな胸を包んだ白いふわふわのセーターに白の帽子、茶色のブーツがキュートな彼女は、最初こそ戸惑っていましたが、「ほら、一緒に踊って踊って!」とけしかけるシェレールに合わせて踊り始め、次第に本気を出してビヨンセ化。照れながらも、渡辺直美が物まねでよくやる、コーラス部分で中腰で横向きになり激しく胸と腰を振るあのダンスを披露。会場から凄まじい拍手が贈られました。シェレールも「Wow, she's hot!」と大絶賛、何だか得した気分。

さて、ミラーボールが回る中、いよいよ "Everything I Miss At Home" が始まります。特別な友達を呼ぶわ、というシェレールのMCに応じて2階席からゆっくりと階段を下りてくるアレクサンダー・オニール。登場するだけで会場がどよめくその巨体。ブラックスーツに包み、一歩一歩、よたよたと歩いてくる姿に一瞬不安がよぎりますが、歌い出してみると想像以上に声は出ています。滝のような汗をシェレールにタオルで拭いてもらい、曲後半で激しく2人のヴォーカルが絡み合う部分には、単なるデュエット相手を超えた「盟友」としての堅いパートナーシップを感じました。

【Cherrelle セットリスト】
08. Fragile (Handle With Care)
09. Artificial Heart
10. High Priority
11. Affair
12. I Didn't Mean To Turn You On
13. Everything I Miss At Home (with Alexander O'Neal)




アレクサンダー・オニール

Alex Loves息もつかせず突っ走ったシェレールの30分間に続いて、この夜一番リラックスしたムードで迎えたアレックスのパート。何しろ巨体過ぎてステップは十分に踏めないし、リズムの取り方もぎこちない。たった "Criticize" 1曲でもう汗だくだし、MCももつれ気味というか、どうにもすべり気味で「大丈夫かな?」と心配になってしまいます。

しかし歌が始まると、これが不思議なくらい盛り返すんですね。あの特徴あるダミ声の存在感あるテナーがジャム&ルイス楽曲に乗って浮遊する感覚、時として拳に力が入るぶっといシャウトもありで、「ああ、やっぱりアレックスだなあ…」と酔わせてくれるのです。彼は The Time のリードヴォーカルになる予定だったにも関わらず、「歌声が黒すぎるから」という理由でプリンスがモーリス・デイと交代させたという有名な逸話がありますが、さもありなん。

個人的には "All True Man" が聴けて良かった。デビュー作Alexander O'Neal からのバラード "If You Were Here Tonight" もじっくり聴かせてくれました。ミネアポリスファンク全開の "Fake" では何と客席に降りてきて、1階席を歌いながら歩き回ってくれます。お客さんと抱き合うアレックスの満足そうな笑顔。

そして今夜はやっぱりシェレールとの絡みをもっと観たい。そんな気持ちに応えて彼女が登場、なんと紺のイブニングドレスに衣装チェンジ。"Never Knew Love Like This" は期待通りの素晴らしい出来で、会場を "Ladies" と "Fellas" に分けてシェレールとアレックスがそれぞれ歌わせる趣向も楽しみつつ、終盤では2人のがなり合いのすごい迫力に圧倒されてしまいました。

いったん2人が退場してから再登場してアンコール、曲はもちろん "Saturday Love" です。これがもう夫婦漫才みたいな息の合った掛け合いで。伝統芸能としてのR&B男女デュオのあるべき姿を見せつけられた気分。あの "Monday, Tuesday, Wednesday..." という早口のフレーズをライヴで合唱できるなんて、感激としか言いようがありません。ステージにはさらにアンジェラ・ウィンブッシュが加わって3人で熱唱、アレックスの30分を加えた約100分のステージは幕を下ろしました。

【Alexander O'Neal セットリスト】
14. Criticize
15. All True Man
16. If You Were Here Tonight
17. Fake
18. Never Knew Love Like This (with Cherrelle)

-Encore-
Saturday Love (with Cherrelle and Angela Winbush)




終わりに

最近の若いR&Bアクトもきっと楽しいライヴをやっているんだろうと思います。でも自分はどうやらこういう泥臭いR&Bマナーのショウの方が楽しめるみたい。ともあれ、ブラコンがブラコンとして成立できたあの時代を振り返りつつ、アレックスやシェレールやアンジェラ・ウィンブッシュがこうして来日できて、元気な様子をライヴで観られるという事実にあらためて深く感謝しなくては。

【メンバー】

Alexander O’Neal (Vocal)
Cherrelle (Vocal)
Angela Winbush (Vocal)

Kurt Zedric Clayton (Key)
Jonathan Richmond (Key)
Steven Bethany (Guitar)
David Parks (Bass)
Carlos Sargent (Drums)
Shunta Lee (Background Vocal)
Candace Ashir (Background Vocal)
Level 42 @ ビルボードライブ東京(6 Feb 2013)
2013年02月19日 (火) * 編集
2013年初めてのコンサートは、イギリスのフュージョン・ポップ・ファンクバンド、Level 42(レベル42)の来日公演になりました。

元々はインスト中心のフュージョンバンドとして結成された彼らですが、1985年のアルバム World Machine 辺りからポップなヴォーカルをフィーチャーしたサウンドに転換し、シングルの "Something About You" が世界的に大ヒットします。続く1987年のアルバム Running in the Family で成功を決定的なものにし、"Lessons in Love" 他のヒット曲を量産しました。90年代に一度解散しますが、その後再結成して2010年には16年ぶりに来日、2011年にも来日しますがいずれも見逃していたので、今回は何としても観るつもりでした。

現在のメンバーは、

Mark King(マーク・キング)/ Vocals & Bass
Mike Lindup(マイク・リンダップ)/ Keyboards & Vocals
Nathan King(ネイサン・キング)/ Guitar & Vocals
Sean Freeman(ショーン・フリーマン)/ Saxophone & Vocals
Pete Ray Biggin(ピート・レイ・ビギン)/ Drums

の5人です。このうちオリジナルメンバーはマーク・キングとマイク・リンダップの2人。

Running in the Family: Deluxe Edition今回の来日は、昨年の欧州ツアーから続く Running in The Family リリース25周年記念の「アルバム完全再現」企画。やや変則的なセットリストでもあり、グレイテスト・ヒッツのライヴを期待していたファンにはちょっと微妙な内容だったかもしれません。そうはいっても、Running in The Family 自体が大ヒット作ですし、全9曲のうち冒頭から5曲は全英ヒットシングルですから、ごく普通に楽しめるセットリスト。むしろ「1987年」という、洋楽ファンにとって充実していたあの時期の雰囲気をパッケージしたアルバムを、丸ごと楽しめる貴重な機会だったと評価すべきでしょう。

ベース/ヴォーカルのマーク・キングはスラップ奏法の名手として知られていますが、テーピングした右手親指から繰り出される超高速スラップには、もう目を奪われっぱなし。フレット部分が青のLEDで光る派手なベースギターがステージに映えます。ジョークを交えたMCも茶目っ気があって楽しい。凄まじいベースラインを弾きながら、ポップで穏やかなメロディラインを歌う太い声も素敵ですね。54歳だというのに、80年代から全く衰えていません。

しかし、ヴォーカルという点では、実はキーボーディストのマイク・リンダップにこの夜すっかり惚れてしまったのでした。"Something About You" でもBメロで印象的な高音を聴かせてくれる彼ですが、ファルセットを駆使したその透き通ったヴォーカルが、いかにLevel 42 の魅力のひとつであるかを思い知らされました。マーク・キングの中低音と絡むコーラスパートはもちろん唯一無二ですし、"Children Say" や "Two Soldiers"、"Starchild" などでマイクのヴォーカルがフィーチャーされると会場も大いに盛り上がります。



会場の盛り上がりといえば、1曲目から1階席が総立ちになるのも(この会場にしては)すごいことだと思います。最前列や2階席右端で、最初から最後まで踊りまくっているお姐さんたちが素敵でした。80年代、相当聴きこんでいたんでしょうね。

そういえば、たまたまカウンターで隣の席になった方と少しお話することができました。同年代と思しき彼女もまた、全米チャートでのブレイクをきっかけに聴き始めた Level 42 ファンということでしたが、その後はずいぶんハマって、過去に渋谷公会堂での来日公演も観ているそうです。米国よりは英国のサウンドがお好きということで、特に85~87年には名盤が多いと話されていました。曰く、Danny Wilson の2ndアルバムとか、Dream Academy とか…。こういうカジュアルなトークができるのもビルボードライブ東京という会場ならではの魅力だと思います。

さてさて、マークとマイク以外のメンバー3人の手堅い演奏も印象に残りました。特にピート・レイ・ビギンのキレのあるドラムスは一見の価値があります。ネイサン・キングのギターは奇を衒わず、オリジナルのソロを忠実に再現するもので好印象でした。ショーン・フリーマンのサックスもなかなか美味しいところを持っていく存在で、ソロの度に盛り上がりました。要所でネイサンと共にコーラスを重ねて厚みを加えてくれたのも忘れられません。

アンコールは今回の来日公演の基本曲目として用意されていた "Hot Water" ではなく、初期のインスト名曲 "Mr. Pink" をやってくれました。スラップベースのソロから始まる怒涛の灼熱ファンクにすっかりノックアウト。各メンバーのソロパートもフィーチャーしながら、間違いなく熱いのにどことなくクールな演奏なんですよね。これが彼らの真骨頂。全米ヒットシングルの2曲こそ大好きだったものの、決してバンド自体の熱心なファンとはいえなかった自分ですが、今回のライヴですっかり好きになってしまいました。Level Best 以外の音源もこれからじっくり聴いていこうと思います。

幸先のいいスタートになりました。今年もたくさんの素晴らしいコンサートに立ち会うことができますように。


【Level 42 セットリスト:2013年2月6日(水)1stステージ@ビルボードライブ東京】
1. Lessons in Love
2. Children Say
3. Running in The Family
4. It's Over
5. To Be With You Again
6. Two Soldiers
7. Fasion Fever
8. The Sleepwalkers
9. Freedom Someday

10. Starchild
11. Something About You

-Encore-
12. Mr. Pink


Gino Vannelli @ Cotton Club(17 Nov 2012)
2012年12月08日 (土) * 編集
2年連続で来日してくれたジノ・ヴァネリ。去年は悩みつつ見逃して悔しい思いをしたので、今年は迷わず行くことにしました。会場は丸の内のコットンクラブ。

ヒットチャート的なピークは70年代後半にありますが、60歳を迎えた現在でもヴォーカルの迫力にはいささかの衰えもありません。タイトなジーンズを着こなして軽やかにステップを踏む姿からは、相当な肉体的鍛錬を重ねていることが窺い知れます。とにかく第一印象は「若い」、そして「カッコいい」。イタリア系の血が醸し出すダンディズム、男の色気がこの歳になっても全開なのに驚くばかり。

今回、1stステージと2ndステージのセットリストが大きく違うことが事前予告されていました(重複は3曲のみ)が、私が観たのは1stステージ。コットンクラブは小さくてアーティストをすぐ近くに感じられる会場です。ステージ前は向かい合わせのテーブル席なので、おひとりさまとしては遠慮して右手のカウンター席へ。それでも間近に息遣いを感じられる距離でライヴを楽しむことができました。


セットリスト

1stステージのセットリストは次のとおり。

1. Storm at Sunup ~ Fly Into This Night
2. Wild Horses
3. Living Inside Myself
4. A Little Bit of Judas
5. Persona Non Grata
6. If I Should Lose This Love
7. Black Cars
8. The Last Days of Summer
9. Brother to Brother
10. I Just Wanna Stop
(Encore)
11. People Gotta Move

オープニングのメドレーが "Fly Into This Night" につながるところで完全に持っていかれます。サビのファルセットの伸びやかなこと。1曲ごとに入れるMCは深みのある低音で、そのギャップも素敵。

バックがテクニシャン揃いなのも安心して聴ける理由ですね。ちなみにメンバーは次のとおり。

 Patrick Lamb(sax)
 Greg Goebel(key)
 Jay Koder(g)
 Damian Erskine(b)
 Reinhardt Melz(ds)
 小林 太 (tp)

フレットレスを弾きこなすベーシストも、ヴィヴィッドなホーンセクションも良かったのですが、やはり特筆すべきはドラマーでしょう。要所を締めまくる切れ味に目を奪われっぱなし。ジノ自身がドラマー出身ということもあって人選にはこだわると聞いていましたが、噂どおりの素晴らしいサウンドでした。

個人的には、"Wild Horses" や "Living Inside Myself"、"Black Cars" といったシングルヒットを着実に歌ってくれたのが嬉しかったのですが、会場を埋めていたコアなファンたちは、2002年の作品 Canto からの8曲目など、意外な選曲にも大喜びしていました。熱心で忠実なファンがたくさんいること、そしてジノが彼らの気持ちもしっかり汲んでいることが伝わってきて、何だかすごく「いい感じ」でした。


"Brother to Brother"

そうは言ってもやはり、これを聴かずには帰れない。
イントロが流れた瞬間に大歓声、立ち上がる人も続出のこのナンバー。

約8分に及ぶプログレッシヴ・フュージョン・AORです。冒頭からラストまで、G/Keyソロとリズム隊のキメをたっぷり盛り込みつつ、異様なテンションの高さのまま突っ走る大名曲。歌い終え、割れんばかりの拍手に包まれたジノが見せた微笑みから想像するに、彼自身も満足のパフォーマンスだったのでしょう。

↓これは発表当時?の古い映像。いろんな意味で「濃い」ですね…。今のステージはもっと洗練されてます。



同じアルバムから、最大のヒット曲になったバラード "I Just Wanna Stop" を歌って本編終了、アンコールはノリノリの "People Gotta Move" でテーブル席を総立ちにさせて踊らせてくれました。


終わりに

もしあと1曲許されるなら "Appaloosa" を聴きたかったけれど、それは2ndステージのみの演奏でした。残念ですが仕方ありません。生粋のエンターテイナーぶりを堪能できただけでも大満足としなければ。

ところでジノ・ヴァネリって、あの声量といい声質といい歌い上げ方といい、やっぱり布施明に似てますよね? ね?

Portnoy, Sheehan, MacAlpine, Sherinian @ ZEPP東京(14 Nov 2012)
2012年11月18日 (日) * 編集
ロック界きってのテクニシャン4人を集め、持ち歌とカバー曲とソロコーナーを織り交ぜて思う存分弾かせたらこうなっちゃった、という感じのライヴ。単純に楽しめました。

Mike Portnoy は Dream Theater の創設メンバー、Derek Sherinian は2代目キーボーディスト。二人が組むのは本当に久しぶりですね。Tony MacAlpine はシュラプネルを代表するネオクラシカル系プレイヤーとして名を馳せた黒人ギタリスト。Billy Sheehan はご存じ Mr. Big のベーシストですが、Tony の1stソロ作 Edge of Insanity で全面サポートを務めていました。Tony は Derek のソロ作にもしばしば参加しています。

ステージ上の配置は左から Sherinian / MacAlpine / Sheehan / Portnoy で、概ね右側に行くほど音が大きく自己主張する感じ。この日はDVD/CDシューティングとあって、メンバーたちも特に気合いが入っていた様子でした。


In Constant Motion [DVD] [Import]Mike Portnoy

脱退したとはいえ、DTの屋台骨をずっと支えてきたのは間違いなく彼。この日も目が回るようなドラミングにMCにと、縦横無尽に目立ちまくります。

少し痩せたかな? 苦労しているのかもしれないし、それはすなわち健康的になったということかもしれません。ドラムスがステージ右端で、しかも横向きセッティングというのは、生まれて初めて観た気がする。ACoS と FII からのナンバーでは、フレーズが完全に曲と一体化してるというか、彼の身体/手足の動きそのものが曲の一部になっちゃってることを再確認。活き活きとして楽しそうなプレイでした。


Planet XDerek Sherinian

在籍期間が短く、事実上の解雇に近かったことからDTの歴史上での影は薄い彼ですが、演奏のタイプが楽曲とうまく噛み合わなかっただけで、独特のスタイルを持った得難いキーボーディストです。脱退後はセッションも含めて膨大な仕事をしており、直近では Black Country Communion がチャートを賑わせていますね。

このツアーではハモンドを持ってきてくれたので、随所でオルガンのごりごりした音色に浸れたのが嬉しかった。じわじわとクレッシェンドする "Hell's Kitchen" には鳥肌が立ちました。


エッジ・オブ・インサニティ(紙ジャケット仕様)Tony MacAlpine

まさか2012年に "The Stranger" を聴くことができるとは。火を噴くような高速ネオクラシカルフレーズを、力が抜けた実に軽いタッチで弾きまくります。DT創設メンバーたちも、バークリーで Edge of Insanity をコピーしまくっていたらしい。Mike Portnoy にとってはある種の「原点」だったのではないかと思います。

2005年にG3で来日していますが、Steve Vai のサポートギターだったのであまり目立てず。今回はたくさん聴けてよかった。できれば鍵盤でさらりとショパンも弾かせたかったけど。


Talas YearsBilly Sheehan

この人がいるだけでステージがぱっと華やかになりますよね~。細身の長身に、ストラップを思いきり短く構えたベース。指があっちへ行ったりこっちへ行ったり、ネックを振り回したりと、観ているだけで忙しいプレイはいつもどおりでした。

アンコールはやっぱり "Shy Boy"。基本的にインストバンドですが、こういう歌もののキメ曲を持っているメンバーがいるおかげで、最後は俄然盛り上がります。Mike と二人でガンガンに歌っていましたね。


最後に

楽しかったです。
ツアーの終盤ということもあって、演奏もこなれていましたし、彼ら自身も楽しんでいるようでした。

その一方で、メンバー間に何らかのケミストリーが生じている様子までは感じられなかったかな。例えばパーマネントなバンドの、ブレイク寸前の上り調子のライヴを観ている時に、背筋がぞくぞくするような感覚は。例えば20年前に Mike Portnoy 自身が感じさせてくれたようなケミストリーは。

もちろん、そんなもの期待する方が間違ってる。つながりのある4人が時間を割いて集まって、期待に違わぬ超絶技巧を聴かせてくれる。僕らは肩の力を抜いてそれを純粋に楽しめばよいのです。
そんなことは十分にわかっているのだけれど、ね。


【セットリスト:PSMS@ZEPP東京 2012年11月14日(水)】

1. A Change of Seasons: I The Crimson Sunrise (Dream Theater cover)
2. Acid Rain (Liquid Tension Experiment cover)
3. The Stranger (Tony MacAlpine cover)
4. Stratus (Billy Cobham cover)
5. Atlantis, Part 1: Apocalypse 1470 B.C. (Derek Sherinian cover)
6. Guitar Solo
7. Been Here Before (Derek Sherinian cover)
8. Birds of Prey (Billy's Boogie) (Tony MacAlpine)
9. Bass Solo
10. The Farandole (Talas cover)
11. The Pump (Jeff Beck cover)
12. Drum Solo
13. Nightmare Cinema (Derek Sherinian cover)
14. Hell's Kitchen (Dream Theater cover)
15. Keyboard Solo
16. Lines in the Sand (Dream Theater cover)
Encore:
17. Shy Boy (Talas cover)
Norah Jones @ 日本武道館(9 Nov 2012)
2012年11月13日 (火) * 編集
ノラ・ジョーンズの、2005年以来7年ぶり3回目の来日公演に行ってきました。前日のチケットが発売から3分で売り切れた後に組まれた追加公演ですが、2階席奥の立見部分まで、まさにぎっしり満員。当日券でたまたま2階西側の席が取れたので、上からじっくりステージを見ることができました。

7年といえば結構長い来日ブランクです。いろいろな人生の転機があった方も多いと思います。例えば自分はその間に2度目の海外駐在をし、現地で子どもが生まれ、帰国後に2度目の転職もしました。

しかしノラの声の魅力は相変わらずで、発声した瞬間に場の空気を変えてしまいます。青っぽいミニのワンピと朱色のヒールに身を包んだ彼女がマイクに向かうと、深みと茶目っ気を増した「あの声」が大きな武道館の隅々まで満たし、聴く者すべてを虜にしていくのです。

大ヒットした1stアルバムのイメージはもはやどこにもありません。彼女自らそのイメージを積極的に壊し続けているのですから。リリースの度に遠く離れた地点に向かっていく彼女に、眩暈がしそうになる時もあります。

この夜も、ノラのアコースティックピアノが聴けたのは冒頭と、"Don't Know Why" などごく一部のみ。立ったままエレピを弾きながら歌うシーンはそれなりにありますが、多くの曲ではギターを抱えたノラを観ながら歌を聴くことになります。本人は至って楽しそうで、会場のあちこちからかかる "I love you, Norah!" という歓声に、いちいち手を止めて "I love you, too!" と答えてにっこりしていました。

バックバンドが退場し、スポットを浴びながらソロでピアノを弾き語る "Don't Know Why" はやはりこの夜の白眉。かなり落としたテンポで、じっくりと歌に魂を吹き込む場面に立ち会います。力の入れどころと、ふっと抜くところの頃合いがもう本当に見事で、目を閉じて聞き惚れてしまいますね。

アンコールはバンド全員がアコースティック楽器を持ってステージ前方に集まり、ノラを囲んで肩を寄せ合うような感じに。とても大きな会場なのに、バンドと観客が親密な空間を共有している感覚を演出します。演奏したのは "Sunrise" と "Come Away With Me" の2曲、実に素敵な締めくくり方でした。

次に観られるのは何年後になるんだろう。
そしてその頃、僕らは一体どこで、何を感じているんだろう。

【Norah Jones セットリスト:2012年11月9日(金)日本武道館】

1. Cold Cold Heart (Hank Williams cover)
2. Out On the Road
3. All A Dream
4. Little Broken Hearts
5. Say Goodbye
6. Take It Back
7. Chasing Pirates
8. Broken
9. Creepin' In
10. Black (Danger Mouse cover)
11. Carnival Town
12. The Nearness of You (Hoagy Carmichael cover)
13. Don't Know Why
14. Sinkin' Soon
15. Miriam
16. Happy Pills
17. Stuck
18. Lonestar
-Encore-
19. Sunrise
20. Come Away With Me


The Dukes of September Rhythm Revue @ 日本武道館(1 Nov 2012)
2012年11月08日 (木) * 編集
2012年11月1日(木)、日本武道館で行われた The Dukes of September Rhythm Revue のコンサートを観てきました。ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)、マイケル・マクドナルド(Michael McDonald)、ボズ・スキャッグス(Boz Scaggs)という、70年代AORのファンにとってはたまらないメンバーによるツアーです。

この3人はかつて、1991年の3月にNYCのビーコン・シアターに集まってライヴを行っており、その時の様子は The New York Rock & Soul Revue: Live At The Beacon というライヴアルバムに収められています。非常に好きなライヴ盤で、今でも時々取り出して聴くのですが、もうあれから21年になるんですね。

今回のツアーは簡単にいうとその21世紀版といった趣で、3人のオリジナル・ヒット曲に加えて、彼らが聴いて育ったソウルやブルースの古い名曲を演奏するという企画。

日本武道館は2階席までぎっしり、ほぼ満員でした。それにしても年齢層が高い。40代前半の自分はかなり若い方に入ります。50代のみならず、60代とお見受けする方々もたくさん。年配かつカップルが多いこともあり、男女比は半々かなあ。男性は半分以上スーツ着用で職場から駆けつけた感じ、女性たちは強い香水の香りが印象的でした。


オープニング

定刻の19時をわずかに回ったところでアナウンスが入って客電が落ち、期待と興奮が一気に高まります。

まずはバックバンドが入場。イントロにあたる1曲目の "People Get Up and Drive Your Funky Soul"(James Brown)の演奏が始まります。ステージは左からホーン3人、ギタリスト、ドラマー、ベーシスト、右端に女性コーラス2人という配置。バックはスティーリー・ダンのツアーメンバーとのことで、引き締まったファンクをぐいぐい聴かせます。女性陣(キャロリン・レオンハートとキャサリン・ラッセル)がリードを取ってワンコーラス歌ったところで、いよいよ御大3人が手を振りながら登場。武道館が一気に沸く瞬間です。

左から、キーボードに向かうマイケル・マクドナルド、グランドピアノを弾くドナルド・フェイゲン、そして右端でギターを奏でるボズ・スキャッグス。なんて豪華な絵なんだ。3人が同じステージで、同じ曲を演奏している!

2曲目は The Isley Brothers の "That Lady" でした。これ大好きな曲なんですよね~。マイクに向かって歌いだしたのはボズ。伸びのある声量豊かなヴォーカルに、武道館から大きな拍手が贈られます。ずっと彼が歌うのかと思っていたら、2番はドナルド、3番はマイケルが順番にリードを取るという贅沢なアレンジ。ドナルドのパートには反応が薄かった武道館ですが、マイケル・マクドナルドのソウルフルなヴォーカルが炸裂するとすごい反応がありました。


Michael "White Lightning" McDonald

Ultimate Collection何を隠そう自分もその一人。ボズもドナルドも別の機会に来日公演を観ているのですが、マイケルだけは見逃してきたんですよね。大好きなヴォーカリスト&キーボーディストなので、気合を入れて彼を集中的に観てきました。お腹にたっぷり肉がついて、ますますシロクマっぽいキャラクターになってきたマイケル、しかしソウルフルなヴォーカルと独特の鍵盤捌きは健在。

今回、彼の持ち歌としては "I Keep Forgettin'"、"What A Fool Believes"、"Takin' It To The Streets" を披露。このうち "I Keep Forgettin" はコンサート序盤ということもあり、高音部が相当苦しそうでした。シャウトを多用して辛うじてフェイク。"What A Fool Believes" はオールタイムフェイヴァリット。イントロの特徴的なフレーズが流れると武道館がどっと盛り上がります。何度聴いても音楽の「魔法」を感じられる素晴らしい歌詞とコード進行とアレンジ。生で体験できて、これだけで元は取れたと感じました。

…と思っていたら、実は一番盛り上がったのは "Takin' It To The Streets" なのでした。冒頭に加えたマイケルのピアノ・インプロヴィゼーションのおかげで全然違う雰囲気になったところに、聴き慣れたあのイントロが切り込んでくると会場の興奮も最高潮に。タイトでパワフルな演奏がマイケルの力強いヴォーカルを支えます。2番からはキャサリン・ラッセルがリードを取ってしまったのですが、鍵盤上でリズミカルに動くマイケルの両手をじっくり見られたのでよしとしましょう。



"If You Don't Know Me By Now" のカヴァーもしっとりと聴かせてくれていい感じだったのですが、マイケルといえばやはりスティーリー・ダン楽曲でのコーラスを挙げないわけにはいきません。


Steely Dan / Donald Fagen

ザ・ベスト・オブ・スティーリー・ダンマイケル・マクドナルドが世に知られるようになったきっかけは、スティーリー・ダンのスタジオ録音への参加でした。独特のハスキーでソウルフルなヴォーカルは、コーラスでも非常に存在感があります。例えば TOTO の "I'll Be Over You"。あるいはクリストファー・クロスの "Ride Like The Wind"。そしてスティーリー・ダンの "Peg"。いずれも彼の声がその場の空気を完全に変えてしまう曲です。

ですから、この夜披露された "Kid Charlemagne" や "Peg" は、これまで飽きるほど聴いてきた曲とはいえ、ドナルド・フェイゲンのリードを引き立てつつ、スタジオ盤どおりにスリリングに絡んでいくマイケルのコーラスに震えるほど感動しました。スティーリー・ダンのライヴに出かけたとしてもこのコーラスを聴くことはできません。本ツアーを観る真の価値は、これらの楽曲にあるような気がします。



オリジナルにマイケルは参加していませんが、"Hey Nineteen" のコーラスも素晴らしかった。このまま永遠にコーラスが続いてほしいと思うくらいに。バックがスティーリー・ダンのサポートメンバーたちであることもあって、バンドの演奏のキレも最高でした。空間を埋め尽くす流麗なホーンセクション、そして終盤でテクニシャンぶりを遺憾なく発揮するマイケル・レオンハートのトランペット・ソロ。ここは見せ場です。

ドナルドはMC担当でもあるのですが、ちょっと意地悪なんですよね。マーヴィン・ゲイの "I Heard It Through The Grapevyne" は好きかい?と尋ねておいて、今夜はそのヴァージョンはやらないよ、グラディス・ナイト版でいくからねと言ってみたり。ちょっと偏屈、でもお茶目なおじさんぶりを発揮。身体全体を大きく使ってグランドピアノを弾きまくる姿に、ジャズフリークだった彼の想いが凝縮されていたように思います。


Boz "The Blues Man" Scaggs

Greatest Hits Liveさて、ボズ・スキャッグスのことを忘れてしまったわけではありません。実はこの夜、ヴォーカリストとして最も調子が良かったのはボズでした。

オリジナル曲としては "Miss Sun"、"Lowdown"、"Lido Shuffle" を歌ってくれました。"Miss Sun" のオリジナルでは終盤にリサ・ダルベロが絡んできてパンチの効いたヴォーカルを聴かせますが、この夜はキャサリン・ラッセルがその役。ダルベロに負けないパワフルな喉で圧倒してくれました。

"Lowdown" のイントロのドラムのフィルインにすかさず反応して手拍子を始めた女性ファンが多かったのにはびっくり。お洒落な女性コーラスはもちろん、装飾的に挿入されるフルートのリフレインも、実際にフルートを2本重ねて忠実に再現する贅沢さです。

テディ・ペンダーグラスの "Love T.K.O." のカヴァーも非常に味があっていい歌唱でしたが、見どころはむしろブルース系のカヴァー曲でのギタープレイだったかもしれない。心からブルースが好きという感じが溢れていました。彼の原点ということになるのだと思いますが、満足げにブルージーなギターソロを弾く彼を見ていると、70年代後半のいわゆるAOR的イメージは、あるいは少々邪魔なのかもしれないなーと思ってみたりも。


アンコール

やっぱりノリのいい曲からでしょう。ボズの "Lido Shuffle" でアリーナは総立ちの大盛り上がり。この時期のボズの中では特にスピード感のある曲ですが、非常にライヴ映えします。かっこいいですねえ。



2曲目は、ドナルドのピアノソロをイントロにして静かにスタートする "Pretzel Logic"。スティーリー・ダンのレパートリーの中では比較的スローで渋めのチューンですが、Live At The Beacon でもアンコール扱いになっていて、どうやらドナルドのお気に入りのようですね。本ツアーでは1番をドナルド、2番をボズ、3番をマイケル・マクドナルドがリードで歌うという超豪華なアレンジ。もちろんコーラスは3人が声を合わせます。

そして3曲目にはスライ&ザ・ファミリー・ストーンのファンキーな "Thank You" が飛び出しました。といっても3人が歌うわけではなく、女性コーラス2人がリード。続く4曲目もファンキーな "Them Changes"。リードヴォーカルはマイケル・マクドナルド。終盤の畳み掛けるようなノリは、ライヴならではの盛り上げ方でした。

メインの3人の出番はこれで終了。ステージ中央で揃って挨拶し、手を振って退場。アウトロとして、オープニングと同じ "People Get Up and Drive Your Funky Soul" が演奏されました。


終わりに

トータルでちょうど2時間。
確かに3人のヒット曲をもっと聴きたかったという思いもあります。

しかし、これはただのロック・コンサートじゃなくて、「レビュー(revue)」なんですよね。あえてそう謳うだけあって、確かに独特のショー性のあるステージになっていたし、そこを堪能すべきなのだろうと思います。ホーンが3本、女性コーラスが2人、ギタリストが2人、鍵盤奏者が3人にリズムセクション。しかも全員が一流の腕前。リラックスした雰囲気も良かったし、3人のルーツをちょっとだけ覗き見たようなスリルも味わえたことだし。

九段下に向かう帰り道、満足感で胸がいっぱいになる、何とも贅沢な夜でした。


【セットリスト】
1. PEOPLE GET UP AND DRIVE YOUR FUNKY SOUL
2. THAT LADY
3. SWEET SOUL MUSIC
4. I KEEP FORGETTIN (EVERY TIME YOY'RE NEAR)
5. TROUBLE MAN
6. KID CHARLEMAGNE
7. THE SAME THING
8. MISS SUN
9. I HEARD IT THROUGH THE GRAPEVINE
10. YOU NEVER CAN TELL
11. IF YOU DON'T KNOW ME BY NOW
12. WHAT A FOOL BELIEVES
13. HEY NINETEEN
14. LOVE T.K.O.
15. (TAKE A LITTLE) PIECE OF MY HEART
16. PEG
17. LOWDOWN
18. TAKIN IT TO THE STREETS
19. REELIN' IN THE YEARS
- Encore -
20. LIDO SHUFFLE
21. PRETZEL LOGIC
22. THANK YOU (FALETTINME BE MICE ELF AGAIN)
23. THEM CHANGES
24. PEOPLE GET UP AND DRIVE YOUR FUNKY SOUL

【メンバー】
ドナルド・フェイゲン、マイケル・マクドナルド、ボズ・スキャッグス
ジョン・ヘリントン/Jon Herington (g)
フレディ・ワシントン/Freddie Washington (b)
シャノン・フォーレスト/Shannon Forrest (ds)
ジム・ビアード/Jim Beard (key)
ジェイ・コリンズ/Jay Collins (sax)
マイケル・レオンハート/Michael Leonhart (tp)
ウォルト・ワイスコフ/Walt Weiskopf (sax)
キャロリン・レオンハート/Carolyn Leonhart (vo)
キャサリン・ラッセル/Catherine Russell (vo)

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