★WINTER WONDERLAND★
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夢劇場の青い空
2013年01月18日 (金) * 編集
Dream Theater のアルバムのアートワークにも点数を付けてみようと思ったのですが、途中で挫折しました(ちなみに好きなアートワーク3枚と言われれば、I&WAwake8Vになります)。

その過程で、彼らのジャケットに青空が描かれているものが多いことに気がつきました。
これは単なる偶然なのでしょうか?

青空がはっきりと描かれている作品だけでも、

Images and Words(上部)
Awake(鏡の中)
Falling Into Infinity
Octavarium
Black Clouds and Silver Linings
(扉の向こう)
A Dramatic Turn of Events

の6枚があります。


偶然か、それとも意図したものか?

さらに、Train of Thought のジャケットはモノクロですが、真っ白に見える空は、実は雲のない晴天かもしれません。Systematic Chaos も、垂れ込めた雲の隙間から、一部青空がのぞいています。さらに言うと、ミニアルバムながら A Change of Seasons も青空の下のビーチですし、ベスト盤 Greatest Hit (...and 21 Other Cool Songs) も、荒天ながら左端に雲の切れ間があり、そこは明らかに青空になっています。

偶然にしては、あまりにも多いような気がしませんか?
何らかのメッセージが込められているのでしょうか。
希望とか、心の平穏とか、前向きなスタンスとか?

ジャケットに青空の占める割合の高いアルバム(FII8VADToE)は、サウンドも自分の好みに近いものが多いことにも気づきました。まあ、これはただの偶然だと思いますけど。


ラリー・フリーマントルのこと

それはさておき、8V 以降は Hugh Syme がアートワークを担当するようになっています。彼らが強く影響を受けた Rush を長らく手がけてきたアーティストですし、もちろん私も好きなのですが、個人的には I&W Awake でとてもいい仕事をした Larry Freemantle のアートワークを、もう一度見てみたい気がします。

幻想的で、イマジネーションが広がるイラストレーションは、少なくともあの頃のDTの音楽性とは非常にマッチしていました。また、アルバム中の各曲のモチーフを巧みに1枚の絵の中に取り込む手法により、アートワークとアルバム全体を一体化させる効果を上げていたと思います。「あの曲はここに使われてる!」とジャケットから探し出すのも楽しい謎解きでした(BC&SL で Hugh Syme も少しやってくれましたけど)。

…Larry Freemantle + DT。
もう叶わぬ夢なのかなあ。


終わりに

ところで、たった今気づいたのですが、BC&SLADToE はアートワーク的に連続性があるようにも見えますね。BC&SL で少年が開けた扉の向こうの青空の、遥か上空に ADToE の世界が広がっているように。

ADToE に続く新作のジャケットでは、どんな世界(と青空)を見せてくれるのでしょうか。

『ドン・フェルダー自伝 天国と地獄 イーグルスという人生』
2013年01月16日 (水) * 編集
ドン・フェルダー自伝 天国と地獄 イーグルスという人生最初に書いておきます。
イーグルス(The Eagles)というバンドの内情に特に興味がなく、イーグルスの音楽だけが好きな人は、この『ドン・フェルダー自伝 天国と地獄 イーグルスという人生』は読まなくてもいいです。いやむしろ、読まない方がよいとすら思います。

この手の自伝はどうしても暴露本的なものになりがちですが、これは特に痛烈な内容です。特に、グレン・フライ(Glenn Frey)とドン・ヘンリー(Don Henley)という、イーグルスの中心人物(そしてドン・フェルダー(Don Felder)を解雇した)2人に関する記述は容赦ないものになっています。

「innocence」という概念は、完全に不可逆のもので、いったん知ってしまったら二度と後戻りすることはできません。「むしろ知らなければよかった…」と思う事柄に人生の中でいくつか出会うことがありますが、この本の内容もそんなものの一つかもしれません。

それでもきっと、読まずにはいられない。
イーグルスファンの一人であるならば。


イーグルス加入まで

生い立ちから読んでいくと、ギターが大好きで真面目な若者だった彼は、始めからいわゆる「業界」のあり方とは相容れないタイプだったということがよくわかります。イーグルス加入以前、才能もあるし人当りも悪くないのに、あと一歩踏み出すことができない彼の優柔不断さには、読みながらいらいらするくらいです。その代わり、この時代には非常に印象的なエピソードが多々盛り込まれています。

たとえば、学生時代にスティーヴン・スティルス(Stephen Stills)とバンドを組んでいたこと。ギター・レッスンの講師時代の優秀な教え子に、トム・ペティ(Tom Petty)がいたこと。オールマン兄弟とよくつるんでおり、デュアン・オールマン(Duane Allman)からスライド・ギターの手ほどきを受けていたこと。クロスビー、スティルス&ナッシュ(Crosby, Stills & Nash)との交流、特にグラハム・ナッシュ(Graham Nash)の人のよさ。一方、コカインで朦朧とするクロスビー。中でも、親友となるバーニー・レドン(Bernie Leadon)と出会うエピソードは素晴らしい。読んだ誰もが彼のことを好きになるでしょう。

そんなレドンに口説かれて、フェルダーはフロリダから西海岸に移り、イーグルスに加入します。ツアー中に見たのはまさに Sex, Drugs & Rock'n'Roll の世界。例えばヘロインをキメ過ぎてほとんど死にそうなキース・リチャーズ(Keith Richards)や、毎晩代わる代わる訪れるグルーピーたちとのセックス。そんなツアーに同行して取材していたのが、ローリング・ストーン誌の若い記者で、これが何と当時まだ10代だったキャメロン・クロウ(Cameron Crowe)だったというのです。後に彼が監督することになる映画『あの頃、ペニー・レインと』(Almost Famous)での描写は、イーグルスのツアーの様子も参考にされているようです。


そして泥沼へ…

さて、イーグルスは元々は非常に民主的かつ平等なバンドでしたが、内部抗争の結果、フライとヘンリーが主導権を握って独裁化し、音楽性の違いからバーニーは脱退を選びます。後にランディ・マイズナー(Randy Meisner)も脱退することになるわけですが、この辺りのグレンとドンの凄まじいまでの横暴さといじめ、他のメンバーに対する理不尽な扱いについては目を覆いたくなるほどです。フェルダーが味わった屈辱は並大抵のものではなかったでしょう。ある程度は割り引いて読むべきだと思いますが、それにしても…と思わせる内容でした。

再結成後のイーグルスは、巨大な「金儲けマシン」と化しており、もはや誰にも歯止めが利かなくなってしまいました。フライとヘンリーが利益の大半を持っていく契約にいちいち疑問を差し挟むフェルダーは、煙たがられて結局途中で解雇されることになります。この頃のエピソードはもはや読むのが辛いくらいなのですが、一方で、同じ扱いを受けているジョー・ウォルシュ(Joe Walsh)やティモシー・B・シュミット(Timothy B. Schmit)は(少なくとも表面上は)黙々とプレイし続けています。フェルダーの正義感はこのことも許せないようで、あれこれ書いているのですが、ここは人それぞれと割り切るべきではなかったかと思います。

ウォルシュやシュミットは彼らなりに、ソロで稼ぐよりはるかに巨額のカネが入る「イーグルスのメンバー」というビジネスを続ける選択を、つまりフライとヘンリーに完全に牛耳られたままこの「金儲けマシン」についていく、という選択をしているわけです。プライドを完全にかなぐり捨てて。個人的には、これはこれで勇気ある選択だとも思います。そして「お金」が持つ力の恐ろしさも感じます。


終わりに

この本を読んで、特に初期イーグルスに顕著に感じられていた「カリフォルニアの爽やかな風」的なイメージは完全に吹き飛んでしまいました。80年代以降の各メンバーのソロ作品などにも思い入れがあるのですが、残念ながらこれまでと同じ気持ちで聴くことは難しくなりました。一度知ってしまったものは、もう知らない状態に戻すことはできないのです。ドン・ヘンリーが "The End of the Innocence" という曲を書いたことに、不思議な因縁を感じます。

しかし一方で、このドロドロさ加減こそが、彼らが(そして私たちも)人間であるということの証しであるのかもしれません。少々悲しいことですが…。

いずれにせよ、ドン・フェルダーが "Hotel California" という一世一代の大名曲をほとんど一人で作り上げたという事実は変わりません。歌詞こそドン・ヘンリーが書きましたが、アレンジも含めた楽曲の大半と、歴史に残るギターソロを残したフェルダーの偉業は、ロックファンの心に永遠に記憶に刻まれるでしょう。

そのことが、ほとんど唯一の救いです。

冬的DTアルバム評価
2013年01月14日 (月) * 編集
ADToE の評価が定まってきたところで、Dream Theater のフルレンスアルバムの現時点での個人的評価(10点満点)をメモしておきます。

1. When Dream and Day Unite 【7/10】
2. Images and Words 【10/10】
3. Awake 【10/10】
4. Falling Into Infinity 【8/10】
5. Metropolis Part 2: Scenes from a Memory 【6/10】
6. Six Degrees of Inner Turbulence【7/10】
7. Train of Thought 【8/10】
8. Octavarium 【8/10】
9. Systematic Chaos 【7/10】
10. Black Clouds & Silver Linings 【8/10】
11. Dramatic Turn of Events 【9/10】

Original Album Series: Dream TheatreWDaDU には良くも悪くも「若さ」を感じますね。現在のメンバーが最新の音で録音したらまた違う印象を持つのでしょうか。I&W は多くの皆さんと同様「人生を変えられた」アルバムです。よく言われるスネアドラムの音も含めて、個人的には丸ごと大好き。Awake は曲も録音も良くて、今でもよく聴きます。FII は人間くさいというか、どことなく温かい手触りが感じられる独特の音で、実はかなり好きだったりします。

SFAM は評価が高いようですが、個人的には実はそれほど聴いていません。何故だろう。無理に引き延ばした感があるのと、ストーリーにそれほど共感できないからかもしれません。6DoIT は全体として好きな音が詰まっているのですが、やはり少々長いです。ToT はメタリックで潔い。8V はバランス感覚が絶妙、アートワークも好きです。

SC は95年以来久々にツアーを観たこともあって嫌いではないのですが、やや重い印象はありますね。それに比べると、BC&SL は突き抜けた感があって、比較的歌えるメロディと複雑なインストがうまく結合しています。冗長な曲もありますが、良いアルバムだと思います。ADToE は個人的には Awake 以来の傑作となりました。

個人的には、この辺で一度外部プロデューサーに任せてみればいいのになと思います。手の内を知り尽くした同士から一歩離れて、客観的な目で見てもらう機会は(彼らが敬愛する Rush を引き合いに出すまでもなく)必要でしょう。他流試合をこなす中で、自分たちも気づかなかった新しいサウンドやアレンジが生まれるかもしれません。

いずれにせよ、以前、読者の方からコメントをいただいたように、聴き込むにつれてDTのアルバム評価はどんどん変わっていきます。最初とっつきにくかった作品が、後になってみると一生ものになることだってあるわけです。長く付き合えるアルバムが1枚、また1枚と増えていくことを、ファンとして嬉しく思っています。

ADToE Revisited
2013年01月10日 (木) * 編集
A DRAMATIC TURN OF EVENTS D2C BOX SETドリーム・シアター(Dream Theater)の Dramatic Turn of Events がリリースされてから1年半近くが経ちました。

リリース直後は音の変化に戸惑った部分もありましたが(ファーストインプレッションはこちら)、聴き込むにつれ、緻密に作り上げられた極めてバランスの良い作品であるとの印象を持つようになりました。


プレイヤー編

最も気に入っているのは、ジェイムズ・ラブリエ(James LaBrie)のヴォーカルパートです。実に伸び伸びと気持ちよさそうに歌っており、声に無理や破綻がありません。ヴォーカルクレジットはジェイムズだけになっており、脱退したマイク・ポートノイ(Mike Portnoy)だけでなく、ジョン・ペトルッチ(John Petrucci)もコーラスをやめています。ジェイムズ自身が声を重ねて録音しているわけですが、個人的にはこれが大正解に思えました。久々に「純ジェイムズ節」が堪能できるアルバムになっています。前作までは、マイキーからヴォーカルについて有形無形の様々なプレッシャーを受けていたのでしょう。制約から解き放たれ、自由に歌える喜びがアルバム全体から伝わってきます。

マイク・マンジーニ(Mike Mangini)のドラムスはこれまでとかなり異なる音作りで、最初のうちこそ若干の違和感がありましたが、聴けば聴くほどよく叩き込まれていることに気付いてハマっていきました。一時はドラムパートばかり聴いていたほどです。細部にわたって本当に巧い人ですね。ジョン・マイアング(John Myung)との息もぴったりで、リズムセクションとしてかっちりまとまっているように思います。今回のツアーは見逃してしまったのですが、次の来日公演こそはぜひ観てみたいものです。

ジョーダン・ルーデス(Jordan Rudess)のキーボードは、ストリングスや分厚いクワイヤ系の音色で空間を埋めている部分が印象に残りました。もちろん速いパッセージはたくさん盛り込まれており、ジョン・ペトルッチ(John Petrucci)との高速ユニゾンも健在です。アナログシンセ的な音もところどころ聴かれますね。ギターとベースの2人のジョンの音量バランスはここ数作では最も良いように思います。むしろアンディ・ウォレス(Andy Wallace)のミックスと、ペトルッチのプロデュースの手際を誉めるべきかもしれません。


楽曲編

全体として、歌メロの充実ぶりが際立っています。最近の彼らのアルバムには、一緒に歌いたくなるような覚えやすいメロディがやや少ない気がしていたので、今作での変化は嬉しい限り。バックトラックも歌メロから遊離することなく、バンドが一体となって曲を盛り上げていく感じがよく演出されています。

意外かもしれませんが、特に気に入っているのは "This Is The Life"、"Far From Heaven"、"Beneath The Surface" の3曲です。いずれもバラード系といえるスロー曲ですが、ジェイムズのヴォーカルがひときわ光っています。歌詞も個人的に非常に心に沁みるもので、何度も何度も読みました。大作系はいずれも聴きどころ満載で充実していますが、特に "On The Back of Angels" はグラミー賞にノミネートされてから聴き込んで、さらに好きになりました。今回のツアーを通して最も演奏された曲になりましたね。当初苦手だった "Breaking All Illusions" は "Far From Heaven" とセットで聴くようにして克服できました。

また、最初は I&W との類似性が耳について、どうしてこんなことをしちゃったんだろう?と思っていたのですが、聴き込むうちに、I&W とは外面的に似ていても全然違うことに気付きました。今となっては、彼らはこういう形で I&W にケリをつけたかったんじゃないかとさえ思います。私自身もあの時期のDTに格別の思い入れがあったわけですが、聴くたびに新たなスタートを感じさせるこのアルバムのおかげで、理想的な形で決別することができました。


終わりに

今後のDTの音楽には、これまでにも増してのめり込みそうです。Roadrunnerレーベルとの契約を更新して制作開始したという新作は、早ければ夏にも完成するのでしょうか。今から楽しみでたまりません。

R.I.P. 2012(7月~12月)
2013年01月10日 (木) * 編集
(⇒R.I.P.2012(1月~6月)

【7月】

Machine Head元ディープ・パープル(Deep Purple)のジョン・ロード(John Lord)が、がんのため71歳で亡くなりました。

ハモンドオルガンの代表的な演奏者の1人で、特に "Highway Star" での疾走感溢れるソロはコピーした人も多いのではないかと思います。バッハ的なコード進行をうまく持ち込んで、リッチー・ブラックモアと共にクラシックとハードロックの融合を図った名曲でした。

結局ライヴで観ることができなかったキーボーディストでもあります。チャンスがあるとすればいつだったんだろう。Purpendicular(『紫の証』)リリース後の来日公演かな。いや、やはり当時の評判を考えればそれはちょっと無理だった。でも無理してでも見ておけばよかったと、今となっては思います。


【8月】

Top Gun Soundtrackイギリス出身の映画監督、トニー・スコット(Tony Scott)が亡くなりました。68歳で、橋から飛び降りての自殺でした。兄の1人は同じく映画監督のリドリー・スコットです。

80年代洋楽ファンにとっては、やはり86年の『トップガン』を忘れるわけにはいきません。サントラ盤はケニー・ロギンスの "Danger Zone" やベルリンの "Take My Breath Away" の大ヒットを生み、大ベストセラーになりました。87年の『ビバリーヒルズ・コップ2』 も印象的でした。サントラからはボブ・シーガー唯一の全米1位 "Shakedown" などのヒットが生まれましたね。

デンゼル・ワシントン主演の06年の『デジャヴ』、09年の『サブウェイ123 激突』といったスリリングな作品を昨年TVで観たばかりでした。デンゼルとの抜群の相性の良さを感じさせましたが、最後の監督作品になったのもデンゼル主演(通算5作目)の2010年作『アンストッパブル』です。ぜひ観てみたいと思っています。


【9月】

明日に向って撃て! オリジナル・サウンドトラック(紙ジャケット仕様)ついに、作詞家ハル・デイヴィッド(Hal David)が亡くなってしまいました。91歳ですから、十分に寿命を全うしたといっていいと思いますが、やはり残念です。

作曲家バート・バカラック(Burt Bacharach)とのコンビで膨大な数の名曲を作りました。個人的なベスト5曲を挙げよといわれたら、順不同で例えば次のとおりです。

"Raindrops Keep Fallin' On My Head"
"(There's) Always Something There To Remind Me"
"This Guy's In Love With You"
"(They Long To Be) Close To You"
"I Say A Little Prayer"

いやあ、やっぱり選びきれませんね。いずれもポップス史上に残る名曲ばかり。
彼の書いた詞は、これからも多くの人に歌い継がれていくことでしょう。


【10月】

ベスト・オブ・ギルバート・オサリバン英国のギタリスト、ビッグ・ジム・サリヴァン(Big Jim Sullivan)が71歳で亡くなりました。実はほとんど知らなかったのですが、POWER ROCK TODAYで伊藤政則さんが彼の思い出を熱く語っており、調べてみたところすごいキャリアの人でした。

エディ・コクランやトム・ジョーンズのバックを務めたことがあるほか、セッションギタリストとして1,000曲以上のチャートヒット曲に参加しており、うち55曲は全英1位だというのだから驚きです。たとえばギルバート・オサリバン(Gilbert O'Sullivan)の "Alone Again (Naturally)" や "Clair" で聴かれるギターも彼のプレイだそうです。

ハードロック関係では、ギターを始めたばかりの少年時代のリッチー・ブラックモアが近所に住んでいて、様々な奏法を教えたというエピソードが有名とのこと。また、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジの師匠でもあるそうです。


【11月】

Scheherazade & Other Stories英国のプログレッシヴ・ロックバンド、ルネッサンス(Renaissance)中心メンバーであったマイケル・ダンフォード(Michael Dunford)が脳内出血のため亡くなりました。

ルネッサンスは、十分な技術を持ちながらも、複雑な演奏テクニックというよりはメロディやオーケストレーションを聴かせるバンドだったという印象を持っています。特に、アニー・ハスラム(Annie Haslam)の透き通ったヴォーカルは、他のバンドとは一線を画する強くしなやかな個性でした。そして、その屋台骨を支えていたのがマイケル・ダンフォードのギターと、何といっても作曲面での貢献であったわけです。

2001年、そして2010年とルネッサンスとして来日してくれたにも関わらず、見逃してしまったのが本当に悔やまれます。


【12月】

Concert for Bangladesh [DVD] [Import]年末になってから大きなニュースが飛び込みました。まさに「巨星堕つ」。インド生まれのシタール奏者、ラヴィ・シャンカール(Ravi Shankar)が92歳でこの世を去りました。

名前はもちろん知っていましたが、実はビートルズ関連の音楽をほとんど聴いていないので、この歳になるまで音や映像を見聞きすることはほぼ皆無でした。ジョージ・ハリスンとの交流や、The Concert For Bangladesh での活躍ぶりについても、この機会に初めて触れることになりました。

たまたま11月にノラ・ジョーンズ(Norah Jones)の来日公演を観る機会がありました。ご存知のとおりノラはラヴィ・シャンカールの娘です。もちろん音楽的には全く異なる道を歩んでいるわけですが、私のようにビートルズ解散後に生まれた世代にとっては、彼女がもっともラヴィ・シャンカールに近いアーティストだった、という人も多いのではないかと思ったりしました。

残された音楽的遺産を、少しずつ体験してみようかなと思っています。
R.I.P. 2012(1月~6月)
2012年12月29日 (土) * 編集
今年も多くの洋楽アーティストやその関係者がこの世を去りました。
そのごく一部を、ここで振り返りつつ追悼したいと思います。


【1月】

米国のブルース/R&Bシンガー、エタ・ジェイムズ(Etta James)が亡くなりました。チェス・レコードから "At Last" や "Tell Mama" など多くのヒットを残した彼女は、1983年にロックの殿堂入りしています。近年では映画『Cadillac Records』の中でビヨンセがエタ役を演じたのが話題になりましたよね。享年73歳でした。

個人的には、ロンドン駐在中の96年2月に、ダイエット・コークのCMに起用されて大ヒットした "I Just Want to Make Love To You" が強く印象に残っています。ズブズブのシカゴ・ブルースで、ローリング・ストーンズやフォガット(ライヴ盤最高!)、トム・ぺティらもカヴァーした名曲。CM自体も面白い出来でした。




【2月】

Whitney Houston: The Deluxe Anniversary Edition80年代洋楽ファンにとって、今年は何といってもホイットニー・ヒューストン(Whitney Houston)を失った年として記憶されることでしょう。

85年の鮮烈なレビューから最後まで、ほとんど常にスター街道を走り続けた人生でした。圧倒的な歌唱力と素晴らしいルックス、そして純真な心を持って歌ったヒット曲の数々は、今でも世界中でオンエアされています。ボビー・ブラウンとの結婚と離婚、それに伴う低迷期こそありましたが、逆にメディアの注目を集め続けて辛かっただろうと思います。近年は着実に復活を遂げつつあり、まさにこれからというところでした。

グラミー賞の授賞式前夜、ビバリーヒルトン・ホテル客室の浴槽で溺死した彼女。コカイン服用の影響による心臓発作と見られています。48歳はいかにも早すぎます。本当に残念なことでした。


【3月】

Captain & Meドゥービー・ブラザーズ(Doobie Brothers)のドラマー、マイケル・ホサック(Michael Hossack)ががんのため65歳で亡くなりました。マイケルは初期ドゥービーズのツイン・ドラムスの一角で、創設メンバーではないものの、結果的にバンドに最も長く在籍したドラマーになりました。Toulouse StreetThe Captain and MeWhat Were Once Vices Are Now Habits の3作はウェストコースト・サウンドを代表する作品群といってもいいと思います。

89年のアルバム Cycles で復活を遂げたドゥービーズの来日公演を、幸運にも2回ほど観るチャンスがありました。ぴったりと息の合ったツイン・ドラムスは実に迫力のあるものでした。


Montroseロニー・モントローズ(Ronnie Montrose)も亡くなりました。自らのバンド、モントローズだけでなく、多くのセッションで豪快なギターを聞かせてくれました。モントローズからはサミー・ヘイガー(Sammy Hagar)が独立して、その後素晴らしいキャリアを築いたのはご存知のとおりです。デビュー作の『ハード・ショック』はオープニングからラストまで、異様なテンションで押し切る大傑作ですよね。サミーの97年作 Marching to Mars の中の1曲で、モントローズのオリジナルメンバーが集まったのに興奮したのをよく覚えています。

近年はがん闘病を続けていましたが、64歳で銃を用いて自殺したとのことです。


【4月】

The Bandザ・バンド(The Band)のドラマー、リヴォン・ヘルム(Levon Helm)が、がんのため71歳で没しました。オリジナルメンバー中、唯一のアメリカ人です。

ザ・バンドはベスト盤を1枚聴いただけで、"The Weight" がAFNでよくかかるなあと思っていた程度でした。ダニエル・ラノワが絡んだロビー・ロバートソンのソロ作は気に入っていたんですけどね。ベスト盤に収められた各曲からは、非常に深い音楽的素養を感じます。大学の音楽サークルの親友からずっと勧められていましたが、これを機会にそろそろザ・バンドに取り掛かってみようと思います。


【5月】

Journey: The Very Best of (Bonus CD)肺がんを患っていたドナ・サマー(Donna Summer)が63歳で亡くなりました。70年代にジョルジオ・モロダーの制作で大ヒットを量産し、グラミー賞を通算5回受賞した超大物ディスコ・クイーンです。全盛期の人気は凄まじかったようですね。私自身は80年代に入ってからの「情熱物語」("She Works Hard for The Money")で初めて触れて、そこから遡った新しいファンです。

ディスコの印象が強いかもしれませんが、よく聴くと実に本格的なヴォーカリストです。ぜひ一度生で観ておきたかったのですが…。


ステイン・アライヴ~ビー・ジーズ・ナンバー・ワン・ヒッツ(ウルトラ・ベスト 1200)ドナとほぼ同年代のロビン・ギブ(Robin Gibb)が、3日後に追いかけるように亡くなりました。結腸がんと闘病した末の享年62歳。英国マン島出身、オーストラリアに移って兄弟でビージーズ(Bee Gees)を結成して世界的に大ヒットします。ディスコの印象が強くありますが、もちろんそれだけではなく、キャリアを通して様々な音楽スタイルを消化して美しいハーモニーを聴かせたグループでした。

ギブ兄弟の中では、ロビンと双子のモーリスが先に他界しており、残ったのはとうとう長兄のバリーだけということになってしまいました。


【6月】

Future Gamesフリートウッド・マック(Fleetwood Mac)の元メンバー、ボブ・ウェルチ(Bob Welch)が66歳で銃自殺しました。ピーター・グリーンの離脱後に加わり、ブルースを演奏していたバンドを、クリスティン・マクヴィーと共にポップな方向への転換を主導したフロントマンとして知られる彼ですが、いわゆる全盛期を迎える前に脱退してしまいます。

その後のソロ活動は山あり谷ありだったとはいえ、果たして自殺までしなくてはならなかったのかどうか…。いろいろと考えさせられる訃報でした。



(⇒R.I.P.2012(7月~12月)
"Take The Time" の歌詞分担
2012年11月06日 (火) * 編集
Images & WordsDream Theater の "Take The Time" (アルバム Images and Words 収録)は私のオールタイム・フェイヴァリットなのですが、この曲のソングライト・クレジットは「Images and Words : Dream Theater」と表記されています。

Images というのはこのアルバム独特の表記で、通常のアルバムだと Music(作曲者)にあたる、いわゆる曲メロのクレジットですが、実は珍しいのは作詞者にあたる "Words" の方です。


豊富なソングライター陣

Dream Theater というバンドは全メンバーがソングライティングを担当しますが、その組み合わせは曲によって異なっており、特に作詞についてはほとんど共作というものがありません。多くの曲は一人の作詞家が歌詞を手掛けており、その担当者の世界観のようなものが詞を通して浮かび上がってくる仕掛けになっています。

ところがこの曲に関しては、冒頭に書いたようなクレジット、つまり全員で歌詞を分担して書いたことになっているのです。

上で「全員」と書きましたが、残念ながら James LaBrie はそこに含まれません。このアルバムは、ヴォーカリスト不在の間に残されたメンバー4人が徹底的に書き上げ、アレンジし尽くして完成した作品を、オーディションで採用した James に歌わせたものです。そんな経緯から、彼は正式メンバーとしてクレジットされてはいるものの、その後もしばらく「雇われヴォーカリスト」と揶揄されることがありました。個人的にはまったく不当な評価だと思いますし、ソングライターとしても優れていることは後のアルバムでも証明されていますよね。


Mike の証言

さて、"Take The Time" については、Mike Portnoy の次のような言葉が見つかります。

"We decided to write a song about everything we'd been going through for the past 3 years - looking for a new singer, a new label and new management - just all the changes we made and all the frustrations we went through, but have it coming from each of our 4 different perspectives. So, we broke it up, and said, 'Okay, you take the first verse, you take the second verse,' went away, wrote lyrics about our feelings about all the stuff we were going through, and then put it together. Then we wrote the chorus together. That was the first time we had ever done that, and it's the only song on the album where the lyrics were actually written by everybody."


不遇の3年間に経験してきた苦労とバンドとしての変化を、楽器担当のメンバー4人、つまり John Petrucci、John Myung、Kevin Moore、Mike Portnoy がそれぞれの視点から手分けして書き、出来上がった詞を持ち寄ってつなげ、最後にコーラスを一緒に書き上げたというのです。詞を「全員で書いた」のはこの1曲だけだった、とも言っています。

では、各パートの分担はどのようなものだったのでしょうか?
調べてみたところでは、いろいろな意見があるようです(メンバーから決定的な公式回答は出ていない?ようですが、もしご存知の方がいらしたら教えてください)。


1st Verse

Just let me catch my breath
I've heard the promises
I've seen the mistakes
I've had my share of tough breaks
I need a new voice, a new law, a new way
Take the time, reevaluate
It's time to pick up the pieces
Go back to square one
I think it's time for a change


ここは Mike Portnoy でほぼ間違いなさそうです。
メロディというよりラップのように言葉を畳み掛ける感じがいかにも Mike。


2nd Verse

There is something that I feel
To be something that is real
I feel the heat within my mind
And craft new challenges with my eyes
Giving freely wandering promises
A place with decisions I'll fashion
I won't waste another breath


ここは John Myung でしょうという説と、いやいや John Petrucci だという説を見かけます。
Petrucci 説を唱える人は、彼らしい少々難解な言い回しをその根拠に挙げています。


Chorus

You can feel the waves coming on
(It's time to take the time)
Let them destroy you or carry you on
(It's time to take them time)
You're fighting the weight of the world
But no one can save you this time
Close your eyes
You can find all you need in your mind


ここは「全員で書いた」という Mike Portnoy の発言もあるわけですが、Kevin Moore じゃないの?と言っている人もいます。John Petrucci でもおかしくありません。Kevin と Mike の2人だという話もあります。


3rd Verse

The unbroken spirit
Obscured and disquiet
Finds clearness this trial demands
And at the end of this day sighs an anxious relief
For the fortune lies still in his hands

If there's a pensive fear, a wasted year
A man must learn to cope
If his obsession's real,
Supression that he feels must turn to hope


John Petrucci 説と Kevin Moore 説があります。
Kevin 説支持者は、単語の選び方と感情の込め方に特徴を感じ取っているようです。


2nd Chorus

Life is no more assuring than love
(It's time to take the time)
You're fighting the weight of the world
And no one can save you this time
Close your eyes
You can find all you need in your mind


いくつかの説があることは最初のコーラスと同じですね。


ブリッジ(インストパート直前)

I close my eyes
And feel the water rise around me
Drown in the beat of time
Let my senses fall away
I can see much clearer now I'm blind


Kevin Moore か John Myung か、といったところですが、幻想的かつ「水」のイメージから、John Myung じゃないかという意見が優勢のようです。"Lifting Shadows Off A Dream" の詞で特徴的に使われていたイメージですね。


終わりに

皆さんはどうお考えになりますか?

もちろん、誰がどのパートを書いたにせよ、これが Dream Theater の代表的なマスターピースの1つであることには変わりありませんし、4人の優れたライターたちが腕を振るった、DT唯一の真の競演作として楽しむことができるのも確かです。

ひょっとすると、種明かしされるよりも少し謎を残したままで聴いている方が、あれこれと想像することができて実はいいのかもしれませんね。


【追記】
その後、詳しい方から教えていただきました。
Mike 自身が説明したところでは、順番に Mike Portnoy、John Myung、John Petrucci、サビが Mike と Kevin、ブリッジが Kevin だそうです。

どうもありがとうございました!
旅をさせよ
2012年10月30日 (火) * 編集
ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)『ビブリア古書堂の事件手帖 』シリーズがベストセラーになっている三上延さんの言葉です。

「人の手を渡った古い本には、中身だけではなく本そのものにも物語がある」


まさしくおっしゃるとおり。だからこそ僕らは古本屋さんを見かけると誘蛾灯に引き寄せられる蛾の如く中に入ってしまうのでしょう。それは中古CDについても然りです。

今回はそんな話です。


偶然の出会い

中古CDショップ、好きですね。

うちのCDのざっと8割は中古盤だと思います。いつ頃どこのお店で買ったものか、さらにはその価格についても概ね覚えています。一方、特に好きなアーティストは新品で買いますが、どこで買ったのかすら忘れてしまったものも多い。

それだけ「中古屋でCDを探して買う」という行為が、自分にとって深い意味を持っているということだろうと思うわけですが、じゃあ何でこんなに中古屋が好きなんだろう?って、我ながら時々考える。

コスト以外の理由のひとつは、新品のお店では「『掘り出し物』に出会えた!」という感覚が得られないから。「箱」を「掘る(dig)」という感覚は、中古ならではのものです。全く知らないアーティストのアルバムを、単に安いからとジャケ買いしてみたら思いがけず好みの音で、そこからどんどんハマることもある。中古屋には、そんな偶然の出会いがあります。しかも往々にして、非常に濃い出会いが。

「掘り出し物!」と思ったということは、自分はそのCDに高い価値を見出しているということですが、お店にそのCDが並んでいるということは、どこの誰かは知らないけれど、手放した人がいるということでもあります。場合によっては、何人もの手と何軒ものお店を渡って(時には海まで渡って)、たまたまそれを探していた自分の前に並んでいる。誰かが手放してくれたからこそ出会えたという事実。

そのこと自体に、何ともいえないロマンを感じます。
…と言ったら言い過ぎでしょうか。

少なくともそこには、三上延さんが言うような何らかの「物語」が隠されているように思う。
「中古」すなわち人の手を渡った商品であるということに、積極的な意味があるのです。

買ってはみたものの、ちっとも良くないやと嘆きつつ売り飛ばしたのか。元カレからのプレゼントを、思い出とともに一気に処分したのか。大好きなアルバムだからこそ、リマスター盤に買い換えて不要になったのか。それとも経済的な理由で、大切にしてきたコレクションを泣く泣く買い取ってもらうことになったのか。棚に100枚並んでいれば、そこには100通りの理由がある。

100通りの理由と、全くの偶然の引き合わせにより、たまたまここで出会った自分とそのCD。
まあ、CDでなくて人間であっても同じことですね。
要はそうした「偶然の出会い」はできるだけ大切にしたいと思ってる、ってことです。


キャッチ・アンド・リリース

そんなわけで中古CDショップを愛する一人であるわけですが、だからこそお店には持続可能な経営をしてほしいと思っています。

僕らにできることは、中古屋でたくさん買い物をすることと、中古屋に商品となるCDを売ることです。異論もあるでしょうが、私は自分より大切にしてくれる人がいるだろうと感じられるCDは、積極的に手放してよいと思っています。

そもそも、収納スペースに限界がある以上、永遠に増やし続けることはできません。趣味や嗜好だって変わるでしょう。思いきって古い物を処分してしまわないと、新しいものには出会えません。苦労して手に入れたCDかもしれませんが、自分にとっての役目を終えたと感じられたら、静かに別れを告げるのです。処分して、再び新しい音を手に入れる。

…これって何かに似ていると思ったら、あれですね。
ルアーフィッシングでいうキャッチ・アンド・リリース。
釣った魚を再び自然にリリースする行為。

もっとも、近年の買取価格の下落は厳しいですね。ほとんどタダ同然、買取不可のアイテムも増えました。昔はディスクユニオンを数軒ハシゴすればそこそこいい価格で売り切ることができたものですが…。レコファンにはあまり売りたくなかったけど、神田小川町のジャニスは「売りたくなるお店」だったなあ。ちなみにブックオフは元々査定額が高くない上に、「新品同様であること」に最大の価値を置いているので、どんなにレアで中古市場で高いタイトルであっても状態が悪ければお断りされます。逆にいうとそういう観点で一律に値付けされているので、「せどり」がビジネスとして成立するんですけど。

自分も部屋をリフォームした際に、リビングルームの壁一面を造りつけの大きなCDラックにしてしまいました。ソフトケースに移し変えているのでずいぶんたくさん収納できますが、いずれにせよ自ら上限を設けたわけです(そしてほぼ上限に達しつつある)。

まあ、もう一度聴き直せないかもしれないほどのCDを所有することに意味があるか?という問題もあるわけで、だからこそ1枚買ったら1枚売るくらいのつもりで、積極的に入れ替えと新陳代謝を図っていかなくちゃと思っています。


さよならは別れの言葉じゃなくて

音楽配信の時代になり、CDという音楽形態もいつまで存在できるか分かりません。
山下達郎さんも、つい最近こんなことを言っています。

「音楽配信によってパッケージのCDが殲滅(せんめつ)されていくことは時代の趨勢(すうせい)で、止めようがない。今回のアルバムを出した最大の理由は、CDがまだ健全な流通に乗っている間にベスト盤を出しておきたかったから。CD時代の終わりに際しての、まとめです」


「CD時代の終わり」と言われると何だか寂しくなったりするものですが、人間は想像以上にフィジカルな生き物なので、急にパッケージとしてのCDがゼロになることもないでしょうし、これまでに出回ったCDを扱う市場もあとしばらくは存続するでしょう。

そんな市場を愛している者の一人として、こう言いたいのです。

可愛いCDには、旅をさせよ。


むしろ可愛いCDだからこそ、旅に出すつもりで手放す。だって、自分の部屋に長いことあったCDが旅をして、どこかの誰かの手に渡り、その人の心に響いてくれるかもしれないんですよ。何となくワクワクしませんか?

いつかどこかで、そのCDを手にした人と偶然オンラインで会って、音楽談義に花が咲くことがあるかもしれない。まさに偶然の再会ですね。ロマンチストかもしれないけれど、それくらいの夢は見たっていいじゃない?


終わりに

本はさらに自由に、簡単に人の手を渡ることができるので、よく知られている「ブッククロッシング」のようなプロジェクトを企画しやすいですね。読み終えた本に旅をさせ、「世界中を図書館に」しようという試みは実に素敵だと思います。

やりようによってはCDでも可能なんじゃないかとも思うのですが、やっぱり再生装置を必要とすることがネックなのだろうか。もう少し考えてみることにします。

"The Tall Ships" - It Bites
2012年09月30日 (日) * 編集
ザ・トール・シップス(限定プレス盤)新作にしてコンセプトアルバムという Map of the Past は残念ながら未聴なのですが、今さらながら前作 The Tall Ships の感想を書いておきます。来日記念ということで。

聴いたのは今年の初めごろ、それまで全く期待していなかったこともあって、ものすごく気に入ってしまいました。恥ずかしながら、まさかここまでとは思わなかった。

オープニングの "Oh My God" でいきなり持っていかれます。ジョン・ミッチェルというヴォーカリストはノーチェックだったのですが、この声にはとても抵抗できない。少しハスキーで、高音部の裏声の使い方とか、若い頃のピーター・ガブリエルに近い印象も。ストーリーを語れる声。「英国」の声。ギターもよく歌ってるし、これにジョン・ベックのキーボード・リフが被さると、もう彼らだけの世界。このテンションで1枚もつのか?とちょっと心配になります。

ところが2曲目 "Ghost" はさらにスピード感のあるチューンで、ますますびっくり。ハードロック的なダイナミズムを貫きながらも、コーラス後にレディオヘッドの "Paranoid Android" みたいなリフを挟んでみたり、はっとさせる仕掛けがあちこちに隠してあります。

その後も静と動を巧みに織り交ぜたレベルの高い楽曲が並んでおり、全く飽きさせません。もともと複雑な展開よりは、ポップなメロディラインこそが彼らの魅力だと思っているのですが、歌えるメロディが満載です。もちろんキーボードやギターのソロも作りこまれているし、リズムチェンジも多いし、「そちら方面」からの聴き方にも十分対応しています。

プログレ風味が頂点を迎えるのは本編ラストの "This Is England"。
13分を超える大作ですが、タイトルだけで勝負あったという感じ。エレピが揺れるイントロからジョン・ミッチェルが歌い始めたストーリーは、緊張感溢れるテクニカルなインスト・パートを経て、壮大なコーラスに到達して再び静かに幕を閉じます。タイトルは別にしても、この曲はイギリスのバンドにしか作れないと思う。狙いすぎかもしれませんが、英国の誇りを感じます。

日本盤ボーナストラックの "These Words" もいい曲で、蛇足という感じは全くありません。アルバム中盤に入っていれば、十分に聴きどころのひとつになっていたと思います。

自分のことをずっとフランシス・ダナリーのファンであって、必ずしもイット・バイツ自体のファンというわけではない…と思い込んでいたのですが、どうやら勘違いだったようです。というか、フランシスと声質は違いますが、それと同じくらい好きなヴォーカルに出会えて嬉しい。陰や憂いを感じさせる場面、力強く歌いきる場面のどちらにも対応できて、しかも今のイット・バイツの演奏陣とぴったり息が合っています。

ともあれ、聴き終わってすぐに頭からリピートしたくなったアルバムは久しぶりでした。それ以降、旧作も引っ張りだしてあれこれと聴き返しているところです。

【It Bites】
Official Site
It Bites (Wikipedia in English)

Big Lad in WindmillOnce Around the WorldEat Me in St. LouisThankyou & Goodnight
2012年のエアチェック事情
2012年09月23日 (日) * 編集
「エアチェック」は今や完全に死語ですが、ある年代以上の音楽ファンには、音源を確保するための最も基本な手法のひとつでした。FMラジカセの録音ボタンに乗せた指先に、全精神を集中した記憶がある方も多いと思います。私自身、「クロスオーバー・イレブン」や「軽音楽をあなたに」など多くの番組にお世話になったものです。

その後、FM局のスタイルの変化やCDの普及などに伴って急速に廃れたエアチェックですが、ネット時代になって再びラジオを録音して楽しむことができるようになっています。


録音とポッドキャスト化

iPod ユーザの場合、録音したファイルをポッドキャスト化するとその後の取り回しが便利です。私の場合、次の構成により録音し、聴いています。

(radiko)radikaadd2itunes

基本は radiko やNHKネットラジオを聴ける環境にあること。その上で radika と add2itunes というツールを活用して iTunes にポッドキャストとして転送します。これを iPod と同期して、主に通勤時に録音済みのラジオ番組を聴いています。

radiko ができて嬉しかったのは、AM放送もステレオであること。AMはモノラルでFMより低音質、という先入観があるかもしれませんが、radiko ではFM放送と同条件で、素晴らしい音質のステレオ放送を聴くことができます。


お気に入りプログラム

私が最近聴いているラジオ番組を簡単にご紹介します。関東圏以外では聴けないものもありますのでご注意ください。

Power Rock Today(BAY-FM:土曜深夜1時~5時)
 DJ:伊藤政則。ハードロック&へヴィメタルにほぼ特化した独特のスタイルで、厚いリスナー層を抱えています。最新音源のオンエア解禁や業界の裏ニュース的なトークに加え、来日公演の先行予約もあり。終盤のプログレ的なセクションで政則さんが思い入れを語るあたりが特に好きです。

全米トップ40 THE 80's(ラジオ日本:土曜17:55~21:00)
 DJ:ケーシー・ケイスン。80年代に全米で放送された "American Top 40" をほぼ原盤のまま、3時間に亘ってオンエアする番組です。ケーシーの声もかかる曲も、すべてが懐かしい。年代は毎週ランダムで、野球中継がある日はお休みになります。

全米トップ40 THE 80's DELUXE EDITION(ラジオ日本:日曜22:00~23:00)
 上記番組を1時間に編集した短縮版で、日本語解説は矢口清治さん。湯川れい子さんや坂井隆夫さんたちとラジオ関東時代の「全米トップ40」を担当していた矢口さんの、独特の穏やかな語り口が落ち着きます。

洋楽80'sファン倶楽部(NHK-FM:日曜16:00~17:00)
 DJ:シャーリー富岡。TV版の「洋楽倶楽部80's」とは姉妹番組のような関係ですが、こちらは当然ながらシャーリーさんの趣味がより濃く出ています。彼女、歳とりませんね~。舌足らずな日本語の発音に和みます。

MUSIC RUMBLE(FMヨコハマ:木曜深夜0時~01:00)
 大御所・湯川れい子さんによるポップス番組。途中、過去の全米No.1ヒットをかけるコーナーはありますが、それ以外はストイックなまでに最新ヒット曲をかけまくります。良い意味でミーハーな彼女の気質がよく伝わる1時間。

ワールドロックナウ(NHK-FM:金曜23:00~24:00)
 テーマ曲もなく「こんばんは、渋谷陽一です」で始まる彼の看板番組。好みは分かれると思いますが、「ロック」という切り口で最新の音楽シーンをざくざく切り取ってくれる心地良さがたまりません。

元春レディオ・ショー(NHK-FM:火曜23:00~24:00)
 もともとは80年代の「サウンドストリート」に遡る番組ですが、佐野元春さんのDJはあの頃のまま。ロックやソウルなど彼が影響を受けた音楽や、最新リリースのピックアップなど、幅広い選曲で楽しませてくれます。

THE PLAYERS(J-WAVE:土曜21:00~21:54)
 基本は小曽根真さんによるジャズ紹介番組ですが、最終週はDJを村治佳織さんに交代してクラシックの選曲になります。NHKのものとは一味異なるジャズ/クラシックテイストを楽しんでいます。

ザ・ソウルミュージック(NHK-FM:木曜23:00~24:00)
 かなり本格的なソウルミュージック番組。といっても何も構える必要はなくて、尾臺順子さんのスムーズで耳に心地良いDJを聴いているうちに、ごく自然にソウルに親しんでいける感じです。

ラジオマンジャック(NHK-FM:土曜16:00~18:00)
 タイトルは「ウルフマン・ジャック」のもじりですね。赤坂康彦さんと遠藤久美子さんで土曜の午後に生放送。トークのテンションは高いし、コント(これは事前録音かな?)も凝ってるし、選曲もなかなか侮れない2時間です。


シャッフルではできないこと

iPod の音楽ファイルは基本的に「既に持っている/聴いたことのある曲」です。シャッフル機能や Genius 機能をうまく使えば、ある程度意外な選曲にすることもできますが、自ずと限界があります。

しかしラジオから流れる音楽には、少なくとも建前上は無限の可能性があります。オンエア解禁になったばかりの未発売曲がかかったり、全く知らないけれども驚くほど自分のグルーヴと同期した曲に巡り会ったりといった体験は日常茶飯事です。

私自身、こうして再びラジオを聴くようになって、最新のヒット曲をチェックする機会や、未聴の古いアーティストに触れる機会が増えました。好きなDJの選曲やトークの内容に影響されながら、自分の趣味を少しずつ形作っていく、という効用もあるように感じます。


終わりに

要するに、やっぱりラジオが好きなのです。
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