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London 1995-1996
1996年03月31日 (日) * 編集
1995年3月から1996年3月までの間、仕事の都合でロンドンに住むことになりました。

たくさんの貴重な体験をすることができ、そのひとつひとつがその後の自分に大きく影響を与えています。そんな英国生活の思い出を、音楽面を中心に日記形式で書きつづってみました。その後事情が変わったものも含め、当時のままの文章をできるだけ残してあります。

かつて別のウェブサイトにアップしていたものです。
London Calling

上記サイトですら未完なのですが、このブログにすべてをまとめるべく、少しずつ移植していく予定です。
気長にお待ちください。
Gun @ Shepherds Bush Empire
1995年05月20日 (土) * 編集
20 May 1995

Swagger失礼ながら、こんなに素晴らしいライヴを見られるとは思っていませんでした。

スコットランドはグラスゴー出身の Gun は、日本では1994年にヒットした "Word Up" のカヴァーで多少知られている程度でしょうか。それも、米国のファンクグループ Cameo の大ヒット曲のカヴァーですから、イロモノ扱いかもしれません。でもこちらではA&Mからアルバムを3枚もリリースし、UKロック界の中堅どころになりつつあります。

この日のライヴ、ぎっしり埋まった Empire のお客さんは追っかけ風の女の子たちと、恐らく過半数はスコットランド出身と思われる男の子たちの熱い歓声に包まれた理想的な環境でした。昨年から続けてきた、アルバム "SWAGGER" のツアーも最終局面。客電の落ちた会場に響き渡る ABBA "Dancing Queen" のテープ。ポピュラーな歌だけに、場内全員が大合唱となり、この時点で早くも会場が一体になるのが感じられます。もちろん自分も一緒に歌いながら。


スコティッシュ魂

日本にいると見落としがちな点ですが、スコットランドというところはイングランドからすると外国になります。「イギリス/United Kingdom」で何でもかんでも括ろうとすると大きな失敗をすることもありますから、気を付けた方がいいかも。

この地でいろいろライヴを見ていると、バンドの出身地がとても大きな意味を持っていることをしばしば感じさせられます。Del Amitri しかり、Gun しかりですが、明らかにロンドン出身のバンドたちとは違う音を出しているような気がするのです。バンドの側にもきっとその意識がある。俺たちはスコティッシュだぜ、この音聴いてみなよ、みたいな。


威風堂々

ツアー終盤ということもあって実に堂々とした演奏ぶり、ステージさばき。黒のレザーパンツ+白のタンクトップ1枚になって女の子の声援を受けまくりながら、自信に満ちたヴォーカルを聴かせる Mark Rankin。私自身は SWAGGER しか持っていなかったので、"Stand In Line", "Don't Say It's Over", そして "W, O, R, D, up !!!" と大合唱する "Word Up" などのヒット曲を楽しんだのはもちろんですが、以前のアルバムからの曲もどれも素晴らしくキャッチーで分かりやすいストレートなロックばかり。すっかり惚れこんで、思わず翌日 HMV で全部買ってきてしまったほどです。

これでもかと繰り出した楽曲の末に、アンコールでは The Police のカヴァー "So Lonely" なんかも飛び出して大団円。会場には終演のBGM、ABBA の "Thank You For The Music" が流れます。他のメンバーが去った後の寂しいステージで、ひとりそっとマイクを床に置いて ABBA を口ずさみながら、観客に手を振って一歩一歩去っていく Mark Rankin の姿に本当に感動しちゃいました。いいライヴだったなあ。
King Crimson @ Royal Albert Hall
1995年05月17日 (水) * 編集
17 May 1995

Thrak今年もっとも動向が注目されるバンドのひとつ、King Crimson がついにロンドンに上陸しました。もちろんルーツは英国にあるプログレッシヴ・ロックバンドですが、現在のラインナップには米国人がずいぶんいるので、必ずしも母国凱旋という感じではないかもしれません。

会場に選ばれたロイヤル・アルバート・ホールは、ロックファンの間でも Emerson, Lake & Palmer や Eric Clapton のライヴ盤などで知られているでしょうが、本来はクラシック音楽が中心の実に由緒正しいホールです。円形に配置された座席に高い天井、紅(=crimson!)を貴重にした座席シートとカーテンによる内装から、私の心に『宮殿』とか『王朝』といったフレーズを想起させてくれます。まさに、King Crimson を迎えるに相応しい会場であると言えるでしょう。


カリフォルニア・ギター・トリオ

午後7時30分、オープニングアクトの California Guitar Trio が演奏を開始します。
以前聴いた時にはずいぶん単調な音楽だなぁという印象を持った彼らですが、今夜の演奏は緩急自在の押しと引きを身につけたようで、バッハの「トッカータとフーガ ニ短調」を含むレパートリーを緊張感を保ったまま約30分プレイし、大きな声援に送られてステージを後にしました。

前座が演奏している間に、会場の方がだいたい埋まっていきます。こちらに来てからはメタル系のライヴを多く見ているせいもありますが、今夜の観客は実に年齢層が高いです。40代から上もかなりいそうで、自分のような20代はむしろ少数派。男性の割合が多いのも印象的です。プログレ者独特の構成かもしれません。仕事帰りにコンサートに足を運ぶ自分ですが、メタル系だとスーツ姿のビジネスマン然とした人は皆無なのに、今夜はそういう人も多くて少し安心。


クリムゾン登場!

20時30分、この会場独特の上品な客電の落ち方、そう「まろやかに落ちる」と言ってもいいくらいのフェードアウトに感心している間もなく、割れんばかりの拍手に迎えられて King Crimson の6人がステージに現れました。ステージ向かって左側に Robert Fripp, Pat Mastelotto の2人、中央手前に Adrian Belew、その後ろに Trey Gunn、ステージ右側には Tony Levin と白のシャツにネクタイを締め、黒のパンツの上に黄色のジャケットを羽織った Bill Bruford の2人が配置されて、Fripp の言う「ダブル・トリオ」という編成を視覚的にもはっきりと意識させます。

静まり返った会場に、Bill が振る鈴のような楽器のサウンドが小さく、しかしはっきりと響き渡ります。各楽器を構えて微動だにしない他の5人のメンバーの後ろで、Bill は静かに鈴を置き、続いてシンバルに触れるか触れないかの微妙なクラッシュから、次第にクレッシェンドしながらシモンズのドラムパッドを叩き始め、ステージ逆サイドの Pat Mastelotto がリズムをカウントして1曲目の "Vrooom" が一気にスタートしました。

見事なまでに微妙にずれたリズム!

2人のドラマーの役割分担は曲によって異なりますが、この曲をはじめとする新曲群では、Pat がメインのビートを刻み Bill がシンコペーション的にパーカッションを加えていきます。Tony Levin の弾く安定したベースラインの上でひたすら裏を裏を叩きまくる Bill。彼のリズム感の凄さをこの1曲からも十分に感じることができます。しかも、単に独走してしまうのでなく、Pat や Tony、さらには Adrian Belew らとしっかりアイ・コンタクトを取りながら、「音で会話している」のです。

前半は新しめの曲が並びました。しかしどれひとつとしてレコードと同じものはありません。「ライヴ」という場においてまったく新しい命を吹き込まれた楽曲たちに、音楽がまさに生きものであり、今この場で生み出されつつあるのだということを思い知らされる瞬間。ダブル・トリオという新概念も、予想以上に分厚く、それでいて切れ味の鋭いリズムを生み出すという点において、かなり成功しているように感じられます。

今回のツアーの見せ場のひとつはやはり往年の名曲 "Red" の再演。

唐突にイントロが鳴り響いた瞬間、はっきり言ってその場に凍りついてしまいました。会場のどよめきも一際大きかったように思います。これまでレコードでは何回も聴いてきた、あのメタリックで激しいリフが、ナマで動き出します。ステレオスピーカーの前でただ想像するだけだった縦横無尽な Bill Bruford のスティックさばきがまさに目の前で再現され、肘から先がまるで別の生き物のように自由に動く、シャープで華麗なドラミングが展開されます。この曲においては Pat Mastelotto はドラムセットから降りて、時々出てきてはシンバルワークだけヘルプするという変則的なスタイルで、スポットライトも主として Bill Bruford に当たっていました。リリースされてから早20年近くが経過しようとしている曲とはとても思えない圧倒的な迫力。

そして、続く "B'Boom" では Pat Mastelotto と完璧に息の合ったドラム・デュエットを披露。残念ながらいい組み合わせとは言い難かった8人組YESでの Alan White とのデュオに比べると、素晴らしくこなれた演奏です。音合わせもずいぶんやったんでしょうね。ツインドラムは各々の役割を分担できる分、自分のプレイは表現しやすくなります。Bill は『太陽と戦慄』アルバムでの Jamie Muir から大きな影響を受けたと語っているところからも、打楽器奏者が2人いる構成そのものは嫌いではないというか、むしろ気に入っているのかもしれません。

そして "THRAK"。爆発する瞬間から静まり返る瞬間まで、極めて振幅の大きいインプロヴィゼーションで、6人の演奏家が自分の楽器で可能な表現の限界に挑みます。CDにおけるこの曲の演奏なんて、ライヴを聴いた後でははるか遠くに霞んでしまうというくらい、物凄いものを見せてもらいました。インプロヴィゼーションを売りにするバンドが少なくなってきた現在、敢えてここまでやってみせる彼らに本当に驚かされます。

さて、実は今日は Bill Bruford の誕生日でした。

アンコール前のラスト、"Indiscipline" の途中で、Adrian Belew が "It's Bill Bruford's birthday!" としゃべって観客に紹介し、ホールが多いに盛り上がります。自分の周囲では、"HAPPY BIRTHDAY, BILL!" と大きな声で叫ぶファンの声も聞こえます。ニコニコと微笑んでちょこんと頭を下げる Bill。実に楽しそう。大好きなクリムゾンでプレイし、満員のロイヤル・アルバート・ホールに祝福されながら誕生日を迎えるという状況が嬉しくないはずはありませんよね。


アンコール

アンコール1回目は、やはり Bill と Pat の猛烈に高速なドラム・デュエットで始まりました。次第に Adrian Belew のギターや、Trey Gunn の弾くスティックの音が加わっていきます。そして、Tony Levin のベースが刻み始めたリフは…

…そう、"The Talking Drum"!

どんどんクレッシェンドし、加速していく不穏なフレーズと原始的なリズムが頂点に達したその瞬間、突如すべてのライトが落ち、会場は真っ暗闇に。漆黒の闇をサーチライトのように白いライトがいくつもかき回し、観客の心臓が早鐘のように打ち続ける中、全てを切り裂く絶叫のような "Larks' Tongues In Aspic Part 2" のイントロのギターリフを Robert Fripp がかき鳴らします。

この時点に至り、もう完全に切れてしまって、全身に鳥肌が立つのを感じながら、飛び出してくる音にただひたすら身を任せていた自分。クリムゾンは本気だ。彼らは単なるノスタルジアや、小銭稼ぎのためにこのツアーをやっているのではない。そのことをハッキリと、身体全体で感じました。音楽の何たるか、ライヴの何たるかを知り尽くしたベテランたちが、わざわざ多忙なスケジュールを調整して一堂に会し、それを我々に見せつけてくれているのです。

アンコール2回目はアルバム Thrak の中でも非常に印象的な優しい曲、"Walking On Air"。Adrian Belew の声には賛否両論ありますが、この曲では全てを包み込むような実に繊細なヴォーカルをホールに響かせ、最後は Fripp のプレイする Soundscape の効果音がエンドレスにリピートされる中、彼らは1人ずつステージから降りていきました。

客電がついてもしばらくは茫然として立ちあがれず。それくらい、余韻が身体中に残っていました。

…そして、脱力感の中で、Robert Fripp にはただの1度たりともスポットライトが当たらなかったことに気がつきました。影になる位置に椅子を置いて腰掛け、じっとバンド全体に目を配りながら的確なギターを弾いていた彼は、ライヴにおいてもプレイヤーというよりはむしろ監督の役割を果たしていたようです。8人も集めておいて、結局自分が中心でスポットライトを浴びていなくては気が済まなかった某YESの某ジョン・アンダーソンとは大違いですね。もちろん、それでこそジョンなのですけれど…


終わりに

率直に言って、これは近年稀に見る素晴らしい、凄すぎるライヴです。
全てのロックファンにぜひとも見てもらいたいショウだと思います。

日本公演も決定したようですね。ロイヤル・アルバート・ホールで売られていたツアーTシャツの背面に早くも日本の都市名がいくつか書いてありました。ちなみに今回はツアーグッズもかなり豊富。商売っ気溢れる Fripp 先生なのでした。Tシャツだけでもいろいろありますが、やっぱり『太陽と戦慄』ロングスリーヴTシャツあたり、かなりカッコイイですよ。


【セットリスト】
1. Vrooom
2. Vrooom: Coda Marine 475
3. Frame By Frame
4. Dinosaur
5. One Time
6. Red
7. B'Boom
8. THRAK
9. Matte Kudasai
10. Sex Sleep Eat Drink Dream
11. People
12. Vrooom Vrooom
13. Elephant Talk
14. Indiscipline

- 1st Encore -
15. The Talking Drum
16. Larks' Tongues In Aspic Part 2

- 2nd Encore -
17. Walking On Air



(ちょっと補足)

コンサートが Bill Bruford の誕生日だったこともあって、彼に関する記述が多くなってしまいました。もう少し他のメンバーの様子について細くしましょう。

まずは私自身にとってオールタイム・フェイヴァリットのベーシスト、Tony Levin ですが、基本的には4弦のベースを弾いていました。そしてたとえば "Coda: Marine 475" のような楽曲でアップライトベースを弓で弾く技を見せてくれます。この時の左手のヴィブラートのかけ方がただ者ではなく、音に素晴らしい表情が加わるのです。本当に器用な人なんですね。アップライトは楽曲によっては指弾きもします。また、Discipline 時代の曲はスティックでプレイ。スティックソロ的な短いインプロから、あの超有名な "Elephant Talk" イントロのスティック・リフにつながった時はもう、口あんぐり状態で、ただただ彼の複雑な指の動きを見つめるばかりでした。

Adrian Belew は、歌がとても上手くなっていて、昔とは別人のようでした。意外かもしれませんが、私はヴォーカリストとして見直しました。もちろんトレードマークのギターイフェクトもあちこちで炸裂し、「いったい何の音だろう?」というようなサウンドの多くは彼のギターから鳴っていたようです。"Dinosaur" では恐竜の声、"Elephant Talk" では象の鳴き声と大活躍でした。

Trey Gunn のスティックはサイズがやたら大きくて目立つのですが、肝心の音の方はどれなのか、演奏中に耳で探すのに苦労しました。他の3人の弦楽器奏者の中に埋もれてしまっていたかもしれません。ただ、4人で強烈に自己主張し合うとバランスを欠くでしょうから、敢えて通奏低音として屋台骨を支えていたのかもしれません。

Pat Mastelotto は、想像していたよりもずっと切れるドラマーでした。Bill とここまで張り合えるとは、失礼ながら思ってもみませんでしたから… Bill がイエローのジャケットを着ていたのに対し、この日の Pat はパープルで、視覚的にも好対照で綺麗でした。

とにかく全体として、観客に対する媚もないし、コール&レスポンスも一切ない真剣勝負のライヴでした。演奏する側も観る側もとても集中していて、とても好感の持てるコンサートであったと思います。
Thunder & SKIN & b.l.o.w. @ Hammersmith Apollo
1995年05月12日 (金) * 編集
さてさて、95年5月のイギリスを縦断した素晴らしすぎる組み合わせのツアー、サンダー(Thunder)+スキン(SKIN)+b.l.o.w. のロンドン公演を見てまいりましたので簡単にご報告。

しかし、何といってもサンダーにスキンに b.l.o.w. ですよ。b.l.o.w. が元リトル・エンジェルスの流れを汲むことを思えば、現在のブリティッシュ・ロックの一番美味しいところを切りとってパッケージしたようなツアーではありませんか。グラスゴー出身ということで多少毛色は違いますが、これにガン(GUN)あたりを加えればまさにUKハードロックの現在が手に取るように分かるショウになったことでしょう。(ガンのロンドン公演は5月20日に見に行く予定)

会場はハマースミス・アポロ(Hammersmith Apollo)。NHKホールの2倍くらいはありそう。一足先にマンチェスターでこのツアーを見たと言う友人から「定刻よりちょっと早めに始まるよ」と忠告を受けていたのに仕事が片付かなくて、チケットにある開演時間の15分前に会場に到着すると、既に b.l.o.w. の演奏が始まっちゃってました。


b.l.o.w

先にEP "MAN AND GOAT ALIKE" やシングルをリリースしている彼らですが、黒人ヴォーカリストの泥臭いブルース/ファンク色を巧みに取りこんだ独特のロックを展開。かなり面白い存在になりそうですが、残念ながらリトル・エンジェルスの音を期待しちゃいけません。逆にレニー・クラヴィッツあたりを聴ける方ならかなりオススメですね。


SKIN

Skin約30分のステージを終えると、この大きなホールもどんどん埋まっていきます。ステージ上の巨大なバンドロゴマークのバックドロップを背に登場したスキンに対する観客の声援はものすごいものがありました。デビューアルバムが大ヒット中ですし、このバンドのヴォーカル、ネヴィル・マクドナルド(Neville McDonald)は本当にステージ映えする男ですからね~。ダイナミックなアクションで会場を煽る煽る。

オープニングの "Money" から一気にぶっ飛ばし、途中、現在レコーディング中の新作からの新曲 "One Mission" なども挟みながら、ラストの "Unbelievable" まで持っていきます。この曲ではほとんど完璧ともいえるコール&レスポンスで会場全体がひとつになり、僕もサビの大合唱に加わってしまいました。しかしたったアルバム1枚でここまで客に認知されるバンドになるとは、末恐ろしいものがあります。素晴らしい!

そしていよいよ真打ち、サンダーの登場です。


THUNDER

Best of Thunder: Their Finest Hour (And a Bit)オープニングテーマはクイーン(Queen)の "We Will Rock You"、もちろんここロンドンで知らない者はいない曲です。観客総立ち、大合唱、リズムに合わせての手拍子が沸き起こります。そんな中、急にステージの幕が上がってハリー・ジェームズ(Harry James)のドラムスがビートを叩き出します。1曲目は "She's So Fine"。

スキンの時も観客は十分歌ってると思っていたのですが、サンダーの格はもう全然違いました。ものすごい合唱ぶり。しかも、今夜のショウはレコーディングしているというではありませんか! BBCでのオンエアになるのか、シングルB面になるのか分かりませんが、自分の手拍子や合唱が残ると思うと、ついオーディエンスとしても力が入ってしまいます。

途中アコースティックなパートを挟んだり、語りを入れたり、いい曲をたくさん持ってるバンドはショウを如何様にでもアレンジできるので強いですよね~。あっという間にアンコールへ。1曲目はハリーがフロントに出てきてアコースティック・ギターを抱えての "A Better Man"。お茶目な彼ですが、最後のコーラスを1人で歌わされ、歌も上手なところをアピール。お客さんにも大ウケでした。

そしてオーラスは "Dirty Love"。サビのコーラスを1階席と2階席に分けて歌わせ、「どっちの声がデカイか、ちゃんとレコーディングに残るんだから気合い入れていけよ!」と煽られて、もう声が枯れるくらいに歌いまくりの夜でした。

ヒーロー不在が叫ばれたりもするブリティッシュ・ロック界ですが、なんのなんの。この夜を見た限り、大英帝国に異状なし、です。それどころかますます面白くなっていきそうな手応えが十分感じられた、とても充実した夜でした。
Francis Dunnery @ Mean Fiddler
1995年04月21日 (金) * 編集
21 April 1995

Fearless元 It Bites のフランシス・ダナリーのライヴを見てきました。

Mean Fiddler は Wilsden Junction という駅のそばにあるクラブ。ロンドン中心部からはかなり離れたところにあります。交通の便はイマイチ良くないけれど、雰囲気のある会場で良質のギグを楽しむことができるところです。結構小さいハコで、底面積自体は渋谷のクラブクアトロほどもないくらい。ただし2階席もあるので人は結構入ります。

「雰囲気のある」内装をどう説明しようかな。

いわゆる British/Irish Pub なのですが、よく西部劇なんかで出てくるような一杯飲み屋のような、木造の建物です。ちょっと暗めの照明の中に木のテーブルと椅子がぼんやり浮かび上がる感じ。ステージはとっても小さい。学園祭なんかで教室でライヴやりますよね? あんな感じの小さなステージです。その正面は小さなながらも吹き抜けのフロアになっていて、ここで踊りながら見ることも可能。後ろの方でビールを飲みながら見ることも可能。

というか、こちらでは日本ほど「気合いを入れて」ライヴに臨む人は多くないような気がします。行きつけのパブで一杯、そのついでに誰か演奏してるな…って感じ。でもそれだけに鑑識眼も厳しくて、つまらないギグなどやろうものならすぐにブーイングです。実は前日の4月20日にもこの Mean Fiddler に足を運んで、アイルランド出身のフォーク系女性シンガー、Elenore McEvoy を見ていました。その時はステージ前のフロアから見たのですが、今日は2階のフランシスの真上から見ようと思って会場に急ぎました。

会場オープンは20:30。こちらでのライヴは日本に比べるとかなり開始が遅いです。前座が2バンドあることを考えると、フランシスの出番は22:30過ぎくらいかなぁ。でも驚いたことに、会場オープン前から気のいいお兄さんやお姉さん、やや年配の方々まで長い列ができていました。It Bites はむしろ過小評価されていたバンドだと思いますし、ソロになってからも大きなヒットがあるわけじゃないのに、熱心なファンがついているんですね。入場してまず2階に上がり、フランシスの真上約2メートルのテーブルをキープ。あとはゆっくりギネスでも飲みながら音楽を聴くとしましょう。

前座その1の Summer Hill というバンドは、R.E.M.直系の良質なギターロックバンド。実に丁寧ないいメロディを書くバンドでした。前座その2の Denzil は94年に "PUB" というアルバムをリリースしているロックバンドで、ドラムスの切れ味が素晴らしく、1曲も知らないのにぐいぐい引き込まれてしまいました。どちらも、与えられた時間を最大限に利用して自分たちをお客さんにアピールしようとする姿勢に好感が持てました。

***

というわけで、22:30ちょっと過ぎ、小さなステージ上から前座のバンドが使ったドラムス、アンプなどのセットがすべて取り払われ、椅子が2つ(ひとつはフランシス用、もうひとつにはノートPCが置いてある)ぽつんと並べられた空間に、フランシス登場。約250人の観客はどっと沸きました。くすんだピンクのTシャツに色の褪せたジーンズ、スニーカーという飾らない格好でセミアコースティックギターを抱えて現れた彼は、例えば "FEARLESS" アルバムのジャケット写真などと比べると少しやつれて見えます。シワとかも目立って。ソロになってからもセールス的には決して成功しているとは言えないし、苦労が多いのかなぁ、とつい心配してしまいます。

でも笑顔を振りまいて椅子に腰掛け、今住んでいるというニューヨークの街の話などを饒舌にしゃべり始めるフランシス。マルボロの封を切って、「タバコ吸うかい?」と最前列のお客さんに語りかけて1本あげたり、何だかすごくアットホームな雰囲気。ライヴと言うよりトークショウみたいな感じ。ペラペラとジョークを織り混ぜながらの彼のしゃべりに、会場はいちいち大ウケでした。

「…というわけで、ニューヨークで書いてきた新曲からいこうか」

なんと彼は、新曲でショウを始めました。1曲目はカントリー風のアコースティック・ギターが印象的なアップテンポ曲 "Just A Man"。「人は僕をいろいろカテゴライズしようとするけれど、やめてくれよ。だって僕はただの1人の男なんだからさ」という内容の曲で、自分にある種のイメージを押し付けて売り込もうとするレコード業界への反発とも取れる歌です。でもメロディは温かいし、本当に美しい。お客さんの中には早速1回聴いただけで一緒に口ずさみ始める人もいて、こういうすぐに覚えられるメロディを書ける才能は稀有なものだと思います。

新曲はあと2曲続きます。恋人への感謝の気持ちをちょっぴりスピリチュアルに描いた"Grateful And Thankful"。インドに行った経験から自分を見つめ直す"Too Much Saturn"。いずれも素晴らしい出来で、早くも新作が楽しみです。何と言ってもあの「声」。目の前にいる彼の、イギリス的な素晴らしい喉から「レコードと同じ声」が出てくると、それだけでもうじーんとしてしまうのです。

アコギの弦を右手の指の腹で小刻みにこすって、嵐のような不穏な音を鳴らしながら、"FEARLESS" アルバム収録の "Feels Like Kissing You Again" が始まります。アルバムよりも幾分テンポを落として、目を閉じて眉間にしわを寄せ、思い入れたっぷりに歌い上げるフランシス。たった200人程度の観客の前でも手抜きは一切なしです。この200人の前で素晴らしいショウをすること、それが歌唄いとしての自分の使命だという意識があるのでしょう。途中、Steve Howe ばりのソロを弾きまくって、いつもはおしゃべりしているこちらのお客さんもシーンと聴き入る中、ドラマティックなこの曲を終わりました。

続いて "Homegrown"。キャッチーなメロのこの曲ではお客さんがコーラスを合唱します。すごく理想的な自然発生的コール&レスポンス。「ああ、ここはロンドンなんだなぁ」という感動に包まれる一瞬です。

そして「ちょっと古い曲をやろうか?」と言って弾き始めた曲はなんと It Bites 時代の "Underneath Your Pillow"! 観客も大いに盛り上がり、大合唱になります。It Bites の曲も浸透してたんですねぇ… と思ったら、僕の後ろで見ているロンドンの女の子は「この人誰?」とか言ってるし、その隣のオーストラリア人だという男の子が「Francis Dunnery だよ。昔 It Bites というバンドにいたんだ。"FEARLESS" っていうソロアルバムを出したんだよ」なんて解説してあげていたり。

続けざまに "Yellow Christian"。まさか It Bites の曲をこんなにここロンドンで聴けるなんて、という感動の中、自分も負けじと大声で歌ってしまいました。アコースティックへのアレンジぶりも素晴らしく、彼のセンスの良さが際立ちます。

以降はお客さんの酔いも回り、すっかり大合唱状態。みんなよく歌詞を覚えてるなぁ。"American Life In The Summertime", "Everyone's A Star", "Fade Away", "Climbing Up The Love Tree" など、"FEARLESS" アルバムからの曲はどれもアコギ1本で聴いて改めてそのメロディの良さに感動するものばかり。むしろアルバムでのアレンジのダサさを思い知らされました。

そんなわけで深夜0時ちょうどに終了。最も感動的だったのは、やっぱり本編ラストの "Still Too Young To Remember" でした。1番から最後まで、お客さん全員で合唱。本当に素晴らしかった。コーラスの部分でギターを弾くのをやめ、「さあさあ、もっと僕に歌って聴かせておくれよ、ロンドン!」と言ってこちらを嬉しそうに見つめていたフランシスの笑顔を、僕はきっと忘れないでしょう。

***

雑誌記事などによると、フランシス自身は It Bites の元メンバーたちにコンタクトをとって再結成することも考えてはいるようです。「でも誰も話に乗ってこないんだよね。僕ってそんなに嫌われてるのかな?」と言って肩をすくめる彼。でも、ライヴを見た感想としては、まあそうフラフラせずに、しばらくこの路線でやってみてからでも遅くはないんじゃない?と思います。いつの日か、時を経て再び一緒に演奏する日が来れば、今日の素晴らしかった It Bites 時代の楽曲たちもより一層輝きを増して聴かれることでしょう…


Warrior Soul @ Astoria
1995年03月31日 (金) * 編集
31 March 1995

Space Age Playboys終演後、"They're cool!" "Yeah, fuckin' cool!" という興奮したロンドンっ子たちの叫びがあちこちから聞こえる中、揉みくちゃになりながら僕も鳥肌立ってました。とにかく超カッコよかったのです。

Warrior Soul は日本ではそれほどメジャーではなく、Warrant の "DOG EAT DOG" アルバムあたりと並んで中古CDショップの「W」のコーナーの定番状態。しかし、ヴォーカリストの Kory Clarke のカリスマぶりから一時はたいへんに注目された New York 出身のパンク系ハードロックバンドです。それがロンドンでこんなに受けているというのはいったいどういう訳なのか…

***

Astoria という会場は、Oxford Street の端っこ近くにあるクラブで、日本だとクラブチッタ川崎をもうひと回り大きくしたような感じ。中にはもちろんバーがあって、開演前からこっちの連中は実によく飲んでます。どんどんお代わりして、3パイントくらい平気で飲んでる感じ。日本と違って普通はメインアクトの前に前座のバンドが演奏しますが、基本的には本番の照明/サウンド調整のため、そしてもうひとつ、観客が本番前に出来上がるために存在していると言ってもよいのではないかと。

この日の前座は Apes, Pigs & Spacemen というバンドでしたが、やはり今ひとつパッとしません。Red Hot Chili Peppers あたりを意識しているのか、ファンキーなロックをプレイしますが、楽曲に魅力が乏しいのが致命的。ドラムスなんかは結構いいビートを叩き出しているんだけど…

客はかなり Warrior Soul を聴き込んでいるらしく、バンドのTシャツを着たファンも目立ちます。他に見かけるTシャツは、Nine Inch Nails, Mudhoney など。こちらでは思いっきり長髪の兄ちゃんとか、限界まで肌を露出したメタル的ファッションの濃い化粧のお姉さんとか「いかにも」という姿の客ばかりで、何だか笑ってしまいます。

***

ずいぶん待たされた後、ついに Warrior Soul の登場で会場の興奮度は一気に頂点に!

シルバーのメタリックなジャケットに身を包んで現れた Kory Clarke はすごくスリムで、そのアクションは往年のマイケル・モンローのそれを思わせる実にカッコいい身のこなし。パンキッシュな激しいリフとビートに乗せて、新作 "SPACE AGE PLAYBOYS" からの曲を立て続けにプレイします。"Rocket Engine" "(Love Is) The Drug" など、ハイテンションで駆け抜ける曲ばかり、コーラスは2度目からすぐに歌えます。観客の煽り方、乗せ方も実に心得ていて憎らしい限り。

ちなみにこのアルバム、Music For Nations レーベルからのインディーズ発売となっていますが、素晴らしすぎる作品なので超オススメ。Kerrang!誌の94年度 Critics Choice で上位に入っていて驚きましたが、さすがイギリスではちゃんと評価されているんだなぁと感心してしまいます。

こんないいアルバム、いいバンドをメジャーの Geffen が切り捨ててしまうなんて、そして誰も引き取ってくれないなんて、今のアメリカ音楽業界は本当に病んでいる。確かに彼らのアメリカ政府批判や現代社会への怒りをぶつけた歌詞は取り扱いが難しいのかもしれないけれど、それにしても、だよ。

そんなことも、とにかくこのライヴを見さえすれば一発で納得させられてしまうはず。だってこれまで少しでもパンクっぽいサウンドが入っているバンドはまったく受け付けない体質だったこの自分が、完全に打ちのめされているのだから。

リードギターの X Factor がまた実にカッコイイ。これまた超細身で、赤髪を振り乱して縦乗りで弾きまくり、ギターの弦をマイクスタンドにこすり付けてノイズをかき鳴らし、右手を大きくぐるぐる回す Steve Stevens ばりのアクションで観客の目を離さない。一方、ベーシストは刺青の入った筋骨逞しい両腕を露出していて、まさに怖いパンク野郎風。Kory の煽る激しい叫びに観客は切れまくっていて、ステージ近くでは客の頭上を泳いでいる人が何人も出現する始末。

「カリスマ」とはこういうことなんだ、と。アンコールのラスト、ギターがノイズをかき鳴らし、ドラムが激しく乱れ打つ中、ステージ中央でしゃがみこんで胸をかきむしりながら、エコーのかかった声で "We're Warrior Soul! We're Warrior Soul! We're Warrior Soul!..." と20回近く叫び続けていた Kory を見ながら、久々に鳥肌が立つのを感じました。

凄い。凄すぎる。

こんなライヴをたった1,300円くらいで見られるこの街もすごい。その凄さを伝えるには、コトバの力が全然足りなくて、とても悔しいのです。

もし輸入盤屋さんで彼らの "SPACE AGE PLAYBOYS" アルバムを見かけたら、ぜひ聴いてみてください。僕の伝えたい気持ちがきっと少しはわかっていただけると思うのですが…


近況報告
1995年03月27日 (月) * 編集
27 March 1995

夏時間に入り、春に向けて急速に動き出すここロンドン。

そうそう、夏時間といえば全然ノーチェックで、先日の月曜日に何も知らずに通常どおり出勤してしまいました。職場で上司に 「今朝はどうしたの?」 と尋ねられ、壁の時計を見て愕然。日曜深夜0時に、イギリス全国で1時間進めて調整されていたのですね。日が長くなり、ますますライヴ日和の今日この頃です。

これからこちらで行われる主なコンサートは以下のとおり。

Subhuman Race★Skid Row (28 March @ Astoria)
新作がこちらのメタル雑誌(Kerrang!, Metal Hammer)などでかなり高い評価をされています。デトロイトでの3月2日のライヴも良かったとのレビューも見かけました。

★Warrior Soul (31 March @ Astoria)
こういうバンドは日本では絶対に見られないので、何が何でも見てきます。Kory Clarke のカリスマぶりについては、Burrn! 誌でもちょっぴりかじる程度に記事が載ったことがありますが、やはりライヴで見なくちゃ。

Burn My Eyes★Machine Head (31 March @ Brixton Academy)
なんだかこっちではすごく盛り上がってるんですよねー。

★Thunder (12 May @ Hammersmith Apollo)
すごく楽しみ! 前座は SKIN と b.l.o.w. という、まさに95年型ブリティッシュロックをパッケージしたようなツアーです。Kerrang! での Thunder のインタビューを読むと、これは意図的な企画見たいですね。ロンドンを含む全英11都市をサーキットします。

この他にも、もうロンドン公演は終了しましたが Bang Tango とか、Paul Di'anno's Killers なんかも現在UKツアー中。Cathedral は Kerrang! 誌にドラマー募集の広告を出してましたが、新ドラマーが決まったようで4月17日に Marquee でライヴの予定。前座は Brutal Truth と Electric Wizard ということらしいけれど、どうなることやら。日本公演もある Jimmy Page & Robert Plant はロンドン以外のイギリス公演では前座に The Black Crowes がつくらしく、黒烏たちだけのために見に行っちゃおうかな…。

それではまた。

BGM:"ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE" by Enuff Z'nuff
    Virgin Megastore のセールで7ポンドで落ちてたので不憫になり拾う。
    "DOPES TO INFINITY" by Monster Magnet
    Soundgarden みたいなウネリ、サイケデリックな妖しさ。超カッコイイです。
Queensryche @ Royal Albert Hall
1995年03月10日 (金) * 編集
約束の地‐プロミスト・ランド‐10 March 1995

ロンドンで生活を始めてから初めて見たライヴ、それがこの Queensryche でした。

到着してからわずか数日後、UKでの『ぴあ』に相当する Time Out 誌で公演があることを見つけ、とっくにソールドアウトと知りつつも出かけてみたのです。会場はロイヤル・アルバート・ホール。

金曜日だったので当然仕事帰り。会社のあるオフィス街、The City からは地下鉄で約30分の South Kensington 駅で降りてから15分近く歩いたところにホールがあります。間に合うだろうか…と不安に駆られつつ、地下道を急ぐ。Time Out には19:30開演とありましたが、ホールに着いてみると看板に「7:55-10:25」と書いてあってひと安心。

さて、次はチケットの入手です。ソールドアウトなのでダフ屋にあたってみるしかありません。痩せたブラックのおやじがチケットを手に近づいてきます。

「チケット持ってるかい? 今夜はソールドアウトだ。コレで見なよ」

定価は14ポンド。当時のレートで約2,100円程度ですが、一応尋ねてみる。

「いくらなら売ってくれる?」
「30だな。売り切れなんだぜ」

ソールドアウト、に力を込めて言いやがるが、それは高過ぎ。早速値切り交渉に入ります。

「高いなぁ。他にあたるからいいよ」
「ちょっと待った。じゃあいくらなら出せる?」

開演時間が迫ってきたため力関係が逆転。どこの国でも同じだなあ。

「せいぜい20ポンドかな」
「よし、それでいいよ」

見事に商談成立。実はイギリスでは街角のチケットショップで買うときも4~5ポンドの手数料が上乗せされるので、初心者の値切りにしてはまあまあではないでしょうか。なんといっても、日本の約半額で Queensryche が見られるのだから。

チケットを手に、意気揚々と会場に入ります。ロイヤル・アルバート・ホールは元々クラシック用のホール。3階席くらいまである大きな円形の建物で、内装も極めて格調高いのです。今夜は出し物がロックだけに、ジーンズにブーツといった格好の若者が9割方を占めていますが、クラシックならそれなりのスタイルが要求されるのは当然のこと。ちなみに自分のように仕事帰りのスーツ姿の勤め人はほとんど皆無。

そして自分の席は… なかった。

というか、チケットは日本でいうアリーナ部分(この会場では Promnade と呼ばれる)のものだったのだけれど、椅子なしのスタンディング状態だったのです。あのダフ屋がこんな席のチケットを持っていたとは…。とにかく、おかげで至近距離で彼らのライヴを見られる!

ほぼ定刻に新作 "PROMISED LAND" 1曲目のSEが流れ始めました。客電が落ち、ステージのバックドロップに貼られた2枚の大型スクリーンに映像が映し出されます。心臓の鼓動音に合わせて、病院に担架で運び込まれる男性の緊迫した映像。しかし彼の鼓動はついに停止し、同時に胎児の映像に切り替わって新しい生命が暗示されます。このあたり、完全にピンク・フロイド的なシアトリカルな演出。そしてジェフ・テイト自身が短い演技をする映像が流れて会場を沸かせた後、"I Am I" のイントロが鳴り響いてメンバー登場。スコット・ロッケンフィールドのドラムセットは前に見た "EMPIRE" ツアーの時よりも小さくなったようです。

ジェフ・テイトはなんとダークスーツに身を固めています。4人ほどのカメラマン&新聞記者を演じるエキストラが出てきてステージ上でジェフにまとわりつく演出。彼はサングラスをかけ、マイクは持たずにヘッドセットを付け、さかんに周りの記者たちを振り払う演技をしながら歌っている。…が、どうも演技過剰のように思えました。確かにヴォーカルも演奏も完璧。でも観客側がその歌/演奏に集中できない程度に目を引く演出というのはやっぱりやり過ぎではないでしょうか。

続いて "Damaged" に移る瞬間、ジェフのスーツは剥ぎ取られ、黒のショートパンツ1枚にサングラス姿となる。鍛え上げられた筋肉を誇示しながら歌い続ける彼ですが、どうもこの曲も、続く "Bridge" も今ひとつ会場が盛り上がらない。やはり自分同様、観客も「あのアルバムの曲」を期待しているのでしょうか。数曲こなした後、ジェフの短いMCが入りました。

「イギリスにまた戻って来れて嬉しいよ。このホールは本当に綺麗だ」

そして暗転、聴き慣れたSEをバックに病院のアニメーション映像がスクリーンに流れ始め、会場全体が大いにどよめきます。そう、"OPERATION:MINDCRIME" の始まりです! やはり本作の知名度はここイギリスでも圧倒的に高いようです。それまでじっとしていたファンたちが "Anarchy X" のビートに合わせて身体を動かし、"Revolution Calling" のコーラスは大合唱になります。残念ながらアルバム全曲は演奏せず、これに "Operation:Mindcrime" と "Mission" を加えた前半部と、"I Don't Believe In Love" "Eyes of A Stranger" "Anarchy X" からなる後半部をつなげた短縮版での再現となりましたが、観客はほとんど歌詞を覚えていて歌いまくっています。間違いなくこの "MINDCRIME" セクションがこの日最大の盛り上がりでした。

こんなにも素晴らしい作品を作り上げてしまった彼らならではの贅沢な悩みかもしれないけれど、観客がいつまでもこれを求め続けるのと、新作も演奏しなくてはならないという現実とをいかに両立させていくかが今後の課題なのかな。事実、その後で演奏された "PROMISED LAND" からの楽曲は、ジェフがサックスを吹いたりする新しい趣向はあったものの、やはり "MINDCRIME" と比べるとオーディエンスが冷めていたのは否めない感じでしたから。

ライヴの後半では "EMPIRE" からの曲が立て続けに演奏されました。"Empire" "Jet City Woman" ともによくこなれた演奏で、ライヴ映えする実にいい曲だと思う。自分も周りと一緒に大声で歌ってしまいます。クリス・デガーモがピアノを弾く "Lady Jane" やサントラ収録曲ながら侮れない "Real World" なども聴きどころ。アンコールでは "Silent Lucidity"(コーラス大合唱!)、"Take Hold of The Flame" "Someone Else" などが演奏されて、大喝采のうちに幕が降りました。

というわけで、ロンドンに来てから初めてのコンサートはおしまい。感慨は大きかったけれど、彼らに期待していたものとは少しズレたライヴだったかもしれません。確かに非の打ち所のない演奏だった。でも車椅子に乗って登場するようなジェフの too much な演技が気になったし、全体を通してみても何を言いたいのか見えにくいショウになってしまっていたような気が。"PROMISED LAND" のダークな雰囲気のせいもあるんだろうな。まあ、個人的にはアリス・クーパーの "TRASH" ツアーでのコテコテな演技に超感動してしまったクチなので、全然平気だったんですけど。

ただ、彼らがだんだんヘヴィメタル/ハードロックの領域から足を踏み出しつつあるのが如実に感じられて。例えば Dream Theater なんてもはや既成のHM/HRの概念では括りきれなくなっていますが、かといってプログレと一括しちゃうのも難しくて、北米エリアではプロモーションのしようがないみたい。

Queensryche もそういう孤高の地位を築きつつあって、個人的にはもちろん信ずる道を堂々と歩き続けてほしいわけですが、肝心の彼ら自身に迷いがありはしないか? というのが唯一の不安だったりして。アリス・クーパーにはちっとも迷いがないでしょう? そういうのと比べた時に、ね。杞憂に終わるといいのだけれど…


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