★WINTER WONDERLAND★
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Angragard / The Crimson Projekct @ クラブチッタ川崎(15 Mar 2013)
2013年04月04日 (木) * 編集
トニー・レヴィンのファンです。

プログレでなくてもいい。むしろ歌もののバックで弾いている時のほうが好きだったりするのですが、これからそう何度も観られそうにないので、機会があれば足を運ぶようにしています。ちなみに過去には90年のABWH公演、94年のPeter Gabriel公演、95年のKing Crimson公演などで観ています。昨年のPeter Gabriel "SO" 再現ツアーはぜひ来日してほしかったのですが… それはさておき。

この夜はキング・クリムゾンではなくクリムゾン・プロジェクトとしての来日。加えて、スウェーデンのアングラガルドがスペシャル・ゲストとして演奏するということで、期待が高まりました。90年代にデビューしたいわゆるクリムゾン・フォロワー的な北欧プログレバンドです。当時よく一緒に語られていたアネクドテンが今年1月に来日したばかりですが、両者が長い時間を経て同じ年に来日することになるなんて、不思議な因縁を感じなくもありません。


アングラガルド

メンバーは次のとおりです。ギタリストがリーダー的な存在のようでした。

 Tord Lindman (Vocal, Electric Guitar)
 Anna Holmgren (Flute, Tenor Saxophone, Keyboards, Recorder, Melodica)
 Johan Brand (Electric Bass, Bass Pedal)
 Linus Kase (Keyboards, Curved Soprano Saxophone, Chorus)
 Erik Hammarstrom (Drums, Glokenspiel, Vibraphone, Tubular Bells)

全6曲で70分という奔放すぎるセットリストにも驚きますが、演奏能力の高さと独自の世界観の表現にひたすら圧倒されました。ステージ中央に鎮座する白い本物のメロトロンと、デジタルのメロトロン音とを上手く重ねる工夫には「その手があったか」と膝を打ちました。

全員腕の確かなメンバーで、見るからに相当練習している様子でしたが、特に目を引いたのはキーボーディスト。ピアノ、オルガン、メロトロン、エレピを四方にセッティングして忙しく動きながら弾き分ける姿は、例えばジョーダン・ルーデスが1台で全部こなしちゃうのとは対極のアナログ的な手法です。しかも曲によってはソプラノサックスまで吹いちゃったりして、まったく目が離せない。

しかし楽器の持ち替えといえば、紅一点のアンナ・ホルムグレンさんの方がすごかった。フルート、テナーサックス、リコーダー、メロディカ(鍵盤ハーモニカですね)に加えて、メロトロン等の鍵盤も弾き、さらには赤風船を膨らませてその空気が漏れる音で演奏(!)したり。大柄で、しかも妙齢とは言い難い雰囲気ですが、女性が視覚的に中央付近にいるプログレバンドは多くないので、大いに差別化要因になりますね。

楽曲の起承転結は、少なくとも1回聴いただけで頭に入る感じではないのですが、北欧独特の静謐かつ幽玄な雰囲気と、静と動の間を行き来する展開が好きなお方なら猛烈にハマる音楽だと思います。

【Angragard セットリスト】
1. (新曲)
2. Hostsejd
3. Langtans Klocka
4. Jordrok
5. Sorgmantel
6. Kung Bore




クリムゾン・プロジェクト

諸事情により「キング・クリムゾン」の名が使えないものの、実態としてはエイドリアン・ブリューとトニー・レヴィンの80年代クリムゾンを核としたダブル・トリオです。

 Adrian Belew (Vocal, Electric Guitar)
 Tony Levin (Chapman Stick, Electric Bass, Chorus)
 Pat Mastelotto (Drums)
 Markus Reuter (Touch Guitar)
 Julie Slick (Electric Bass)
 Tobias Ralph (Drums)

観ての率直な感想は「エイドリアン頑張ってるなあ」というもの。
だってもう63歳ですよ。それがこんなに元気そうに楽しそうにギターを弾きまくり、伸びのある声で歌いまくるのです。これまでで一番調子がいいんじゃないだろうか。観る度に違和感を感じていた自分ですが、なぜか今回はすっと入ってきて、すっかりファンになってしまいました。ロバート・フリップもビル・ブルフォードもいない状態で客観的に見て初めて分かることなのですが、これってやはり根本的にエイドリアンのバンドなんですよね。好き放題、に見えるかもしれませんが、実は彼のコントロールがよく効いています。

トニーはといえば、相変わらず素敵でした。
大きく脚を広げてスティックを構えるだけで、こんなに絵になる男がいるでしょうか。その両手から繰り出される "Elephant Talk" のイントロのリフは、もうこのまま永遠に続いてほしいと思うくらいに素晴らしい。"Sleepless" や "Thela Hun Ginjeet" では人差し指と中指に棒をつけて弦を叩く「ファンク・フィンガーズ」奏法で高速かつ芯の太いベースサウンドを聴かせてくれます。今回嬉しかったのは、エイドリアンと随所でハモるコーラスがとてもクリアに聴けたこと。トニーのヴォーカルをこんなに堪能できるなんて。

意外な収穫はパット・マステロットでした。
95年はビルばかり観ていて、パットはぱっとしないなあ…と思っていたものでしたが、あれから20年近く経ち、すっかりプログレ畑の人になってしまったパット・マステロットの力強くも変幻自在なドラミングに魅せられました。数週間前に元Mr. Misterのリチャード・ペイジを観たばかりですが、これではたとえMr. Misterが再結成するとしても、ドラムをお願いできる状態ではないですね。ちょっと音圧と手数が違いすぎる。

毎晩セットリストが変わっていて、この夜は「太陽と戦慄パート2」を演奏しませんでした。それだけが心残りですが、いずれにせよ観てよかったと素直に思えるライヴでした。

【The Crimson Projekct セットリスト】
1. Red
2. Dinosaur
3. Sleepless
4. Elephant Talk
5. Three of a Perfect Pair
6. B'Boom
7. THRAK
8. VROOOM VROOOM
9. Neurotica
10. Indiscipline

-Encore-
11. Frame by Frame
12. Thela Hun Ginjeet

Sheena Easton @ビルボードライブ東京(13 Mar 2013)
2013年04月03日 (水) * 編集
シーナ・イーストンの来日公演を観てきました。3月13日(水)のビルボードライブ東京、セカンド・ステージです。残念ながらお客さんはちょっと少なめでした。バックバンドは次のとおり。

 Tony Q:Saxohone
 Dave Hart:Guitar, Vocal
 Dan Ellis:Keyboards
 Earl Campbell:Drums
 Phillip Ingram:Vocal

定刻を少し回って照明が落ち、Sylvester のディスコ名曲 "You Make Me Feel (Mighty Real)" に乗ってシーナが登場します。丈が短めの緑のラメドレスに黒のピンヒール。ひょっとして生脚かな? 拍手に迎えられて歌い出したのは、Chaka Khan のカヴァーで有名な Prince 作の "I Feel For You"。バンドもほぼ黒人で固め、いきなりR&B色の濃いオープニングになりました。ハーモニカ・ソロはギタリストが担当。スティーヴィー・ワンダーばりという訳にはいきませんが、なかなか上手いですね。

The Lover in Meそれにしても、もうシーナも53歳。全体に相当ふっくらしており、特に脚はかなりぷっくりですね。ドレスからこぼれそうな胸の大きさにもびっくりしました。声は少々しゃがれ気味ですが、そこそこに出ています。1曲終わって「セカンドショーよ!」と自分に気合を入れるように声を出していたのが妙に印象的でした。セクシー&ダンス路線の "The Lover in Me" を歌ったところで、「カフェイン取らなくちゃ」とマグカップでコーヒーらしきものをごくごく飲んでました。

ここでMCタイムなのですが、イヤリングを落としてしまい「いいのいいの、フェイク・ダイヤモンドだから。フェイク・ティファニーよ」とケラケラ笑いながら、拾わずに(というか体型とタイトなドレスでかがめなかった…)足でスタッフの方に蹴ったのにはちょっとびっくり。MCも「今夜は80年代、90年代の曲をたっぷり歌うわよ。なんたって、2000年代にはヒット曲がないんだから!(笑)」などと自虐モード全開でしゃべりまくり、何だかいい感じにスコットランドのおばちゃん化したシーナに、驚きつつも新たな魅力を見出すことになりました。

「そうそう、もちろんバラードもね。この歌の歌詞は実話なのよ」と言って彼女が歌いだしたのは、個人的に最も好きな "Almost Over You"。名邦題『哀しみ色に染めて』のイメージそのままに、深く感情移入して歌い上げるシーナに惚れ直しました。この1曲だけでも観に来た甲斐があったというものです。さらに「次はスタンダードをカヴァーした No Strings アルバムからの曲よ。多分この会場で4人くらいしか買ってくれてないと思うけれど、私はとても好きな作品なの」と言って歌った "How Deep Is The Ocean"。場末のクラブ感がかすれた声に絶妙にマッチしていました。サックスソロも素敵。このアルバム、アレンジはパトリース・ラッシェンなんですよね。

ここで雰囲気をがらりと変える "Strut"。一気に80年代前半の派手なサウンドに戻った後は、スツールに腰掛け、アコースティックギターの伴奏で2ndアルバム収録の名曲 "You Could Have Been With Me" を。1stで成功して2ndのプロダクションはビッグになりすぎたけれど、装飾をそぎ落として楽曲の核心に迫ってみたいとのことで、しんみりと聴かせてくれました。

Private Heaven「来月で54なのよね~。80年代のセクシーすぎる曲を歌うにはもう歳だから、今のうちにやっとかないと…」とか言いながら、"U Got The Look" と "Sugar Walls"(大好き!)をメドレー形式で歌います。前者はご存知プリンスとのデュエット曲ですが、ここでコーラスのフィリップ・イングラムが前に出てきてシーナと絡みます。実は知らなかったのですが、彼はあのジェームズ・イングラムの弟で、70年代後半のファンクバンド Switch のメンバーでもあるんですね。道理で上手いわけです。"Sugar Walls" もプリンス作のお色気ナンバーですが、セクシーな語尾上げには熟女ならではの妖しい魅力も。さらに "The Glamorous Life" のフレーズや各メンバーのソロ回しも交えて大いに楽しめるセクションになりました。

続く「愛・ひととき」("We've Got Tonight")では、一転してシーナとフィリップがシリアスなデュエットを聴かせます。ケニー・ロジャース版とも、オリジナルのボブ・シーガー版とも異なる深みを感じさせるフィリップに、澄んだハイトーンで絡むシーナが印象的でした。ここでメンバー紹介、さらに "Telefone" で畳み掛けます。アップテンポで盛り上がる曲ですが、歌い終わったシーナのMCは「今じゃ意味ない歌よね~。メールしちゃえばいいんだから」。確かにそうなんだけど…。

キーボードのみの伴奏で "When He Shines" を歌い上げたあとは、「フィリップや私たちの世代はモータウンを聴きながら育ったの。これは私なりのトリビュートよ」としゃべってフィリップ・イングラムと "Ain't Nothing Like The Real Thing" を歌ってくれました。途中で "You're All I Need To Get By" とマッシュアップしましたが、いずれもマーヴィン・ゲイとタミ・テレルのデュエットで、ソングライターはアシュフォード&シンプソンです。シーナのルーツにモータウンがあるとは全然意識してませんでした。でも確かにすごく彼女に合っている。そういえばライヴ前に会場に流れていたのはスティーヴィー・ワンダーのアルバム Songs in the Key of Life じゃなかったかな?

…なんて考えていたところに、初期の大ヒット "9 To 5 (Morning Train)" が来ました。こうして聴くと、モータウンっぽさを感じなくもないですね。会場も手拍子で盛り上がります。そしてまたまた大ヒットの007ナンバー "For Your Eyes Only"。まさしく彼女のためにあるような名曲だといつも思うのですが、生で聴くと一層深く感じるものがあります。

そしてアンコールはデビュー曲の "Modern Girl"。結局ここに帰ってくる、というわけです。いろいろなジャンルにチャレンジして、表現者としての枠を広げてきた彼女ですが、あまりにも鮮烈だったこの曲を、そしてこの曲に惚れたファンたちを大切にする気持ちが伝わります。歌いながら最前列のお客さんと一人ひとり握手して、満面のスマイルでお辞儀をしてステージを降りました。

80年代のアイドルだった彼女が、50代半ばになった今もこうして日本でファンに温かく迎えられている様子を目の当たりにできて、何だかとても幸せでした。自分自身、ティーンエイジャー時代に好きだった曲をたくさん生で聴くことができたわけですが、こんな機会はいつまでもあるわけではないでしょう。観られるうちに観ておかないと、という気持ちを強くした夜でした。


【セットリスト】
1. I Feel For You
2. The Lover in Me
3. Almost Over You
4. How Deep Is The Ocean
5. Strut
6. You Could Have Been With Me
7. U Got The Look / Sugar Walls
8. We've Got Tonight
9. Telefone (Long Distance Love Affair)
10. When He Shines
11. Ain't Nothing Like The Real Thing
12. Morning Train
13. For Your Eyes Only

-Encore-
14. Modern Girl

Journey @ 日本武道館(11 Mar 2013)
2013年04月03日 (水) * 編集
ジャーニーの4年ぶりの来日公演を、彼らにとって30年ぶりとなる日本武道館で観てきました。2004年に東京国際フォーラムでスティーヴ・オウジェリー在籍時のライヴを観ています(⇒レポート)が、自分にとってはそれ以来となります。

前座はジョナサン・ケインの娘 Madison Cain と、ニール・ショーンの息子 Miles Schon による Madison Cain & Miles Schon でした。親の七光り以外の何ものでもない彼らですが、武道館の舞台に立てたことに敬意を表してか、チープ・トリックの「甘い罠」で幕を開けたのは粋な演出。オリジナル曲はもう一歩の出来でしたが、アデルの "Rolling In The Deep" のカヴァーは、大柄な Madison の声質にも合っており悪くない出来だったかな。2人には忘れ難い思い出になったことでしょう。

さてジャーニーはといえば、日本公演初日、WOWOW生中継、超満員の日本武道館と、あらゆる条件が揃って緊張感がみなぎる中、我々の期待に約2時間の『グレイテスト・ヒッツ』選曲・演奏で応えてくれました。オープニングの "Separate Ways" からアンコールの "Be Good To Yourself" まで、次々と繰り出される名曲、ヒット曲の数々。アーネル・ピネダ加入後の楽曲が一切なしというのは、個人的にはちょっとどうかなとも思うのですが、ここはやはり思いきったセットリストを評価します。

エスケイプ(紙ジャケット仕様)ほとんど全曲、武道館のオーディエンス全員で歌いまくりだったわけですが(特に "Separate Ways" から "Any Way You Want It" にかけての流れはすごかった)、個人的にはアルバム ESCAPE のタイトル曲が嬉しかった。産業ロックのフォーマットに乗りながら、やや複雑な展開も見せる楽曲で、リズムのキメなど聴かせどころ満載の大好きなナンバーです。"Who's Crying Now" や "Stone in Love" の終盤でのニール・ショーンのギターソロもいつもどおり泣き泣きで、思わずエアギター。

初めて観るアーネルは、実に元気にショウを盛り上げてくれました。小さな彼がステージをところ狭しと走り回り、スピーカーに駆け上っては僕らに手を振ってくれ、そして高くジャンプして飛び降りる。ヴォーカルも安定していて、ややかすれ気味でしたが高音部の不安がほとんどないので安心して聴いていられます(オウジェリーではそうはいかなかった)。"Faithfully" での感情の込め方には思わず引き込まれました。

恒例のリードヴォーカル交代は2曲。まずは "Keep On Runnin'" でディーン・カストロノヴォが叩きまくりながら歌います。これがまた巧いんだよね~。そしてディーンとジョナサン・ケインが "Just The Same Way" を歌います。これらはほぼ定番の持ち歌になっているようですが、もっと他の曲も聴いてみたい。さらに言うと、ロス・ヴァロリーの歌も聴きたかった。実は今回、ステージを観ていて一番素敵だったのはロスの渋すぎる存在感でした。

ジャーニーはニールの派手なギターと、スティーヴのハイトーンなヴォーカルが2大看板になっていて、そこにジョナサンのピアノかシンセが味付けをする造りの曲が多いので、どうしてもリズムセクション、特にベースは相対的に地味な位置にあります。でも聴けば聴くほどに、よく練られたベースラインとコーラスで、ロス・ヴァロリーがボトムをがっちり固めているんですよね。そして "Who's Crying Now" や "Don't Stop Believin'" のイントロでは、ピアノと絡む独特の音色のベースが重要な役割を果たしています。普段は飄々としているロスが、特にこの2曲では真剣な表情でイントロを弾いていたのが印象に残りました。

その "Don't Stop Believin'"。もちろん昔から聴く者に力をくれる名曲でしたが、ここ数年はドラマ「GLEE」で印象的な使われ方をしたことで、若い世代にも広く知られるようになりましたよね。この夜もそんな若者たちの姿を何人も見かけましたが、3.11の地震と津波で被害を受けた方々に捧げる形で演奏されたこの曲を、武道館にいたほぼ全員が割れんばかりの大合唱でアーネルと共に歌い上げたあの瞬間のぞくぞくするような感覚は、きっと一生忘れないと思います。素敵なライヴをありがとう!


【セットリスト】
1. Seperate Ways
2. Any Way You Want It
3. Ask the Lonely
4. Who's Crying Now
5. Only the Young
-Guitar Solo-
6. Stone in Love
7. Keep on Runnin' (vocal: Dean)
8. Edge of the Blade
9. Faithfully
10. Lights
11. Stay Awhile (acoustic)
-Keyboard Solo-
12. Open Arms
13. Just the Same Way (vocal: Jonathan)
14. Escape
15. Dead or Alive
16. Wheel in the Sky
17. Don't Stop Believin'

-Encore-
18. Be Good to Yourself

Ringo Starr & His All Starr Band @ ZEPP東京(26 Feb 2013)
2013年03月08日 (金) * 編集
今年3本目のコンサートは、なんと洋楽を聴き始めて約30年にして初めてのビートルズ体験になりました。

これまで、ジョージ・ハリスンもポール・マッカートニーも観る機会があったはずですが、肝心のビートルズ自体に深い思い入れのない自分にとって彼らは「過去の人たち」。どうしてもビートルズというだけでは会場に足を運ぶところまでいかなかったんですよね。

ところが今回のリンゴ・スター・バンドは、非常に自分のツボを突いた人選になっており、これならバックバンドを観るだけでも安いと思わせてくれました。そんなわけで、決して元ビートルを観に行ったわけではないのですが、結果としてとても素晴らしい時間を過ごすことができました。

ちなみにメンバーは次のとおり。

Ringo Starr
Todd Rundgren
Steve Lukather (TOTO)
Gregg Rolie (Journey, Santana)
Richard Page (Mr. Mister)
Mark Rivera
Gregg Bissonette

リンゴさんは来日直前、日本のファンにこんなメッセージを届けてくれました。



以下、順不同で感想をメモします。


リンゴ・スター

お人柄なんだろうと思いますが、現れた瞬間に幸せのオーラみたいなものがステージ全体に溢れるのが感じられます。"It Don't Come Easy" のリズムに合わせて、満面の笑みで身体を揺らしながら両手でピースサインを掲げる彼を目にすると、それだけで何かを信じられるような、誰もを愛することができるような、そんな不思議な力が湧いてきました。

声もよく出ていましたし、ドラムスも、お茶目なMCも素敵でした。"Don't Pass Me By" ではピアノの弾き語りもやってくれましたね。ソロの代表曲あり、新曲あり、そして何といってもビートルズナンバーでの会場一体となった大コーラスには鳥肌が立ちました。「伝説」の一端に触れることができて幸せです。


トッド・ラングレン

以前にもビートルズのトリビュートツアーで来日したのを観たことがありますが、今回も相変わらずの怪人ぶりでした。ラメの派手派手なスーツの下に蛍光黄緑のワイシャツといういでたち。本来いくらでもシリアスになれる人だと思うのですが、パーティの時はとことん盛り上げ役に徹するタイプですね。

"I Saw The Light" は大好きなので、聴けてよかったです。周りでも結構歌っている人たちがいました。本当にチャーミングな曲ですよね。あとは "Can We Still Be Friends" を歌ってほしかったところですが、それはまた次の機会のお楽しみにとっておきましょう。


グレッグ・ローリー

元Journeyの、というよりこの夜は元Santanaのグレッグ・ローリー。なんと Santana の1st、2nd、3rdから1曲ずつ演奏するという嬉しい選曲。ウッドストックの生き証人たちを観られるチャンスはだんだん最後に近づいていると思われますが、まさか2013年に初期サンタナのキーボードを生で体験できるとは思いませんでした。

ヴォーカルも渋くて良かったのですが、何といってもハモンドオルガン。噴き出すようなサウンドに酔いました。あとは初期 Journey の楽曲をやってくれたら最高だったのですが、それは無理なお願いというものでしょうね。


リチャード・ペイジ

個人的に最も期待していたのが元 Mr. Mister の彼。80年代に一世を風靡した彼らですが、このまま二度と観られないのかなと半ば諦めていました(ドラムスのパット・マステロットはキング・クリムゾンで何度か観てますけど)。

細身の身体に高い位置でベースギターを構えて指で弦を弾く姿は、ラッシュのゲディ・リーにも少し似ているような。透き通ったハイトーンのヴォーカルに衰えはほとんど見られず、期待通りに2曲の全米#1ヒット "Kyrie" と "Broken Wings" を聴かせてくれました。本当にカッコよかった! これだけでほとんどチケット代の元は取れたと思います。

コーラスでも大活躍していましたね。




スティーヴ・ルカサー

TOTOのスタジオ盤は基本的にどれも好き(特に4枚目)ですが、なぜかライヴで観るといつも微妙な違和感を感じてしまうルカサーさん。弾きまくり過ぎるからかな? 今夜のメンバーの中で最も日本語の発音が上手だったのは間違いないでしょう。

"Rosanna"、"Africa"、"Hold The Line" の3曲というのもちょっと。盛り上がる最大公約数的な選曲なんだろうと思いますが、せっかくなら意外な曲をやってみたら面白かったのに…などと、どんどん愚痴になってしまうのでここまで。

サンタナ楽曲でカルロスになりきって弾いてくれたのは流石でした。やっぱり巧い人です。


マーク・リヴェラとグレッグ・ビソネット

マークさんはサックスプレイヤーですが、パーカッションも叩くしコーラスもするし(特にTOTO楽曲でのボビー・キンボールのパート!)、大忙しの仕事人。グレッグ・ビソネットはデイヴ・リー・ロスのバンドでの派手なプレイが印象的でしたが、この日はあくまで淡々と裏方に徹していました。特にリンゴとツイン・ドラムスになる時には必ずリンゴを視界に入れた状態で叩いており、リズムをぴったり合わせていたのが素敵でした。


終わりに

それにしてもリンゴ・スターの出番での、会場を埋め尽くすピースサインには圧倒されました。後ろの方から観ていたので、オーディエンスから一斉に手が挙がる様はひたすら壮観。自分もまさに全身、Peace & Love に包まれました。

まだほとんどビートルズを聴いていないという事実は、ある意味幸せなことかもしれません。これからじっくり登っていくべき、どこまでも高く美しい音楽の山々が目の前にそびえ立っているということでもあるのですから。



【セットリスト】

1. Matchbox (Ringo Starr)
2. It Don't Come Easy (Ringo Starr)
3. Wings (Ringo Starr)
4. I Saw the Light (Todd Rundgren)
5. Evil Ways (Gregg Rolie)
6. Rosanna (Steve Lukather)
7. Kyrie (Richard Page)
8. Don't Pass Me By (Ringo Starr)
9. Bang the Drum All Day (Todd Rundgren)
10. Boys (Ringo Starr)
11. Yellow Submarine (Ringo Starr)
12. Black Magic Woman (Gregg Rolie)
13. Honey Don't (Ringo Starr)
14. Anthem (Ringo Starr)
15. You Are Mine (Richard Page)
16. Africa (Steve Lukather)
17. Everybody's Everything (Gregg Rolie)
18. I Wanna Be Your Man (Ringo Starr)
19. Love Is the Answer (Todd Rundgren)
20. Broken Wings (Richard Page)
21. Hold the Line (Steve Lukather)
22. Photograph (Ringo Starr)
23. Act Naturally (Ringo Starr)
24. With a Little Help from My Friend (Ringo Starr)
25. Give Peace a Chance (Ringo Starr)
Angela Winbush / Cherrelle / Alexander O'Neal @ ビルボードライブ東京(11 Feb 2013)
2013年03月06日 (水) * 編集
Level42に続いてビルボードライブ東京で今年2本目のコンサートを観てきました。

かつてブラック・コンテンポラリー(ブラコン)と呼ばれたジャンルがありました。今でいうR&Bとも、それ以前のソウルとも異なる、80年代前半の独特のサウンドです。今回はその「ブラコン」を象徴するような3人のアクトによる、夢のような競演となりました。何とアンジェラ・ウィンブッシュ(Angela Winbush)、シェレール(Cherrelle)、アレクサンダー・オニール(Alexander O'Neal)の揃い踏みです。


アンジェラ・ウィンブッシュ

Angela Winbush18時を少し回って客電が落ちると、まずはアンジェラ・ウィンブッシュのステージ。結論から言えば、これがあまりにも凄すぎました。Usher の "Yeah" のフレーズに乗ってステージに現れた彼女は、かつてのジャケット写真より豊満になってはいたものの、一たび歌い出せばその声の太さと存在感にぶっ飛ばされます。

1曲目は Rene & Angela 時代(85年)の "I'll Be Good"。いきなりの大ヒット曲に1階席のお客さんもどよめきます。アンジェラも最前列のお客さんの帽子を奪ってかぶってみたり、オーディエンスを巻き込んで盛り上げます。

2曲目は87年のソロデビュー作から、バラードの "Angel"。女性コーラスがしっとりと絡む中、アンジェラの伸びのいい高音が炸裂。最近はアルバムも出していなかったようですし、聞いたところでは乳がん闘病もしていたらしいのに、この現役感といったら。最前列の男性をステージに上げ、自分の背面に密着させて抱かせたり、正面からハグして彼の顔を胸の谷間に押しつけたりと、エロティックな演出に会場が沸きます。

再びルネ&アンジェラのアルバム Street Called Desire からミディアムスローな "You Don't Have To Cry" と "Your Smile" を続けざまに披露、1月に58歳になったとはとても思えない若々しさとパワーに圧倒されっぱなし。そして "I've Learned To Respect (The Power of Love)" へ。Stephanie Mills の全米R&B#1ヒットとしては知っていましたが、この曲を書いたのがアンジェラ・ウィンブッシュだったんですね。ゴスペル風に盛り上げる感動的な歌唱。

感動が頂点に達したところで、一転してアップテンポの "It's Alright" へ。会場を総立ちにさせてノリノリの聖歌隊に変えてしまいます。全員で「ハレルヤ!」のコール&レスポンス、お見事としかいいようのない40分間のマジックでした。本当に素晴らしい!

【Angela Winbush セットリスト】
01. Intro
02. I'll Be Good
03. Angel
04. You Don't Have To Cry
05. Your Smile
06. I've Learned To Respect (The Power Of Love)
07. It's Alright




シェレール

Right Timeアンジェラが退場すると、休む間もなくすぐにシェレールが登場します。ちなみにバンドはアレックスのステージまでぶっ通しで演奏。左からキーボード、ギター、ドラムス、ベース、キーボード、女性コーラス2人で、特に女性陣(Shunta Lee & Candace Ashir)の丁寧なサポートはショウのクオリティを高めていました。このうち Candace は Candy Fox という名前でも活躍しているみたいですね。

シェレールは… なんと右足を傷めてしまったとかで、痛々しくギプスで固めた姿。しかし元気は十分、ステップも踏むしジャンプもするし、ハスキーな高音ヴォーカルを張り上げながら、音が割れそうなすごい声量で歌いまくります。マイクは要らなかったんじゃないかと思うくらい。そういえば確かに綾戸智恵さんに似てますね。小柄でキュートで、時にしゃがれるパンチの利いたシャウトもあったりして。

代表曲のオンパレードで、ジャム&ルイス全盛期の珠玉のナンバーを再現してくれました。傑作アルバム Affair のタイトル曲ではジャネット・ジャクソンの "What Have You Done For Me Lately" のフレーズをブレイクに挟む遊び心もあり。世が世ならジャネットではなくシェレールが天下を取った可能性もあったと思いませんか?

個人的に嬉しかったのは "I Didn't Mean To Turn You On"。ロバート・パーマーがカバーして全米2位にしたことで知った曲ではありますが、やはりオリジナルはかっこ良すぎ。超クールなのにどす黒い熱さにまみれたファンクが会場を煽り、躍らせてくれました。ほとばしるパワーにひたすら感動。

ここでちょっとブレイク。会場に向かって「ビヨンセ好きな子いない?」と呼びかけます。手を挙げた女の子を無理やり引っ張ってきてステージに上げ、有無を言わせずバンドが "Crazy in Love" のフレーズを演奏開始! 誰の目にも明らかに大きな胸を包んだ白いふわふわのセーターに白の帽子、茶色のブーツがキュートな彼女は、最初こそ戸惑っていましたが、「ほら、一緒に踊って踊って!」とけしかけるシェレールに合わせて踊り始め、次第に本気を出してビヨンセ化。照れながらも、渡辺直美が物まねでよくやる、コーラス部分で中腰で横向きになり激しく胸と腰を振るあのダンスを披露。会場から凄まじい拍手が贈られました。シェレールも「Wow, she's hot!」と大絶賛、何だか得した気分。

さて、ミラーボールが回る中、いよいよ "Everything I Miss At Home" が始まります。特別な友達を呼ぶわ、というシェレールのMCに応じて2階席からゆっくりと階段を下りてくるアレクサンダー・オニール。登場するだけで会場がどよめくその巨体。ブラックスーツに包み、一歩一歩、よたよたと歩いてくる姿に一瞬不安がよぎりますが、歌い出してみると想像以上に声は出ています。滝のような汗をシェレールにタオルで拭いてもらい、曲後半で激しく2人のヴォーカルが絡み合う部分には、単なるデュエット相手を超えた「盟友」としての堅いパートナーシップを感じました。

【Cherrelle セットリスト】
08. Fragile (Handle With Care)
09. Artificial Heart
10. High Priority
11. Affair
12. I Didn't Mean To Turn You On
13. Everything I Miss At Home (with Alexander O'Neal)




アレクサンダー・オニール

Alex Loves息もつかせず突っ走ったシェレールの30分間に続いて、この夜一番リラックスしたムードで迎えたアレックスのパート。何しろ巨体過ぎてステップは十分に踏めないし、リズムの取り方もぎこちない。たった "Criticize" 1曲でもう汗だくだし、MCももつれ気味というか、どうにもすべり気味で「大丈夫かな?」と心配になってしまいます。

しかし歌が始まると、これが不思議なくらい盛り返すんですね。あの特徴あるダミ声の存在感あるテナーがジャム&ルイス楽曲に乗って浮遊する感覚、時として拳に力が入るぶっといシャウトもありで、「ああ、やっぱりアレックスだなあ…」と酔わせてくれるのです。彼は The Time のリードヴォーカルになる予定だったにも関わらず、「歌声が黒すぎるから」という理由でプリンスがモーリス・デイと交代させたという有名な逸話がありますが、さもありなん。

個人的には "All True Man" が聴けて良かった。デビュー作Alexander O'Neal からのバラード "If You Were Here Tonight" もじっくり聴かせてくれました。ミネアポリスファンク全開の "Fake" では何と客席に降りてきて、1階席を歌いながら歩き回ってくれます。お客さんと抱き合うアレックスの満足そうな笑顔。

そして今夜はやっぱりシェレールとの絡みをもっと観たい。そんな気持ちに応えて彼女が登場、なんと紺のイブニングドレスに衣装チェンジ。"Never Knew Love Like This" は期待通りの素晴らしい出来で、会場を "Ladies" と "Fellas" に分けてシェレールとアレックスがそれぞれ歌わせる趣向も楽しみつつ、終盤では2人のがなり合いのすごい迫力に圧倒されてしまいました。

いったん2人が退場してから再登場してアンコール、曲はもちろん "Saturday Love" です。これがもう夫婦漫才みたいな息の合った掛け合いで。伝統芸能としてのR&B男女デュオのあるべき姿を見せつけられた気分。あの "Monday, Tuesday, Wednesday..." という早口のフレーズをライヴで合唱できるなんて、感激としか言いようがありません。ステージにはさらにアンジェラ・ウィンブッシュが加わって3人で熱唱、アレックスの30分を加えた約100分のステージは幕を下ろしました。

【Alexander O'Neal セットリスト】
14. Criticize
15. All True Man
16. If You Were Here Tonight
17. Fake
18. Never Knew Love Like This (with Cherrelle)

-Encore-
Saturday Love (with Cherrelle and Angela Winbush)




終わりに

最近の若いR&Bアクトもきっと楽しいライヴをやっているんだろうと思います。でも自分はどうやらこういう泥臭いR&Bマナーのショウの方が楽しめるみたい。ともあれ、ブラコンがブラコンとして成立できたあの時代を振り返りつつ、アレックスやシェレールやアンジェラ・ウィンブッシュがこうして来日できて、元気な様子をライヴで観られるという事実にあらためて深く感謝しなくては。

【メンバー】

Alexander O’Neal (Vocal)
Cherrelle (Vocal)
Angela Winbush (Vocal)

Kurt Zedric Clayton (Key)
Jonathan Richmond (Key)
Steven Bethany (Guitar)
David Parks (Bass)
Carlos Sargent (Drums)
Shunta Lee (Background Vocal)
Candace Ashir (Background Vocal)
Level 42 @ ビルボードライブ東京(6 Feb 2013)
2013年02月19日 (火) * 編集
2013年初めてのコンサートは、イギリスのフュージョン・ポップ・ファンクバンド、Level 42(レベル42)の来日公演になりました。

元々はインスト中心のフュージョンバンドとして結成された彼らですが、1985年のアルバム World Machine 辺りからポップなヴォーカルをフィーチャーしたサウンドに転換し、シングルの "Something About You" が世界的に大ヒットします。続く1987年のアルバム Running in the Family で成功を決定的なものにし、"Lessons in Love" 他のヒット曲を量産しました。90年代に一度解散しますが、その後再結成して2010年には16年ぶりに来日、2011年にも来日しますがいずれも見逃していたので、今回は何としても観るつもりでした。

現在のメンバーは、

Mark King(マーク・キング)/ Vocals & Bass
Mike Lindup(マイク・リンダップ)/ Keyboards & Vocals
Nathan King(ネイサン・キング)/ Guitar & Vocals
Sean Freeman(ショーン・フリーマン)/ Saxophone & Vocals
Pete Ray Biggin(ピート・レイ・ビギン)/ Drums

の5人です。このうちオリジナルメンバーはマーク・キングとマイク・リンダップの2人。

Running in the Family: Deluxe Edition今回の来日は、昨年の欧州ツアーから続く Running in The Family リリース25周年記念の「アルバム完全再現」企画。やや変則的なセットリストでもあり、グレイテスト・ヒッツのライヴを期待していたファンにはちょっと微妙な内容だったかもしれません。そうはいっても、Running in The Family 自体が大ヒット作ですし、全9曲のうち冒頭から5曲は全英ヒットシングルですから、ごく普通に楽しめるセットリスト。むしろ「1987年」という、洋楽ファンにとって充実していたあの時期の雰囲気をパッケージしたアルバムを、丸ごと楽しめる貴重な機会だったと評価すべきでしょう。

ベース/ヴォーカルのマーク・キングはスラップ奏法の名手として知られていますが、テーピングした右手親指から繰り出される超高速スラップには、もう目を奪われっぱなし。フレット部分が青のLEDで光る派手なベースギターがステージに映えます。ジョークを交えたMCも茶目っ気があって楽しい。凄まじいベースラインを弾きながら、ポップで穏やかなメロディラインを歌う太い声も素敵ですね。54歳だというのに、80年代から全く衰えていません。

しかし、ヴォーカルという点では、実はキーボーディストのマイク・リンダップにこの夜すっかり惚れてしまったのでした。"Something About You" でもBメロで印象的な高音を聴かせてくれる彼ですが、ファルセットを駆使したその透き通ったヴォーカルが、いかにLevel 42 の魅力のひとつであるかを思い知らされました。マーク・キングの中低音と絡むコーラスパートはもちろん唯一無二ですし、"Children Say" や "Two Soldiers"、"Starchild" などでマイクのヴォーカルがフィーチャーされると会場も大いに盛り上がります。



会場の盛り上がりといえば、1曲目から1階席が総立ちになるのも(この会場にしては)すごいことだと思います。最前列や2階席右端で、最初から最後まで踊りまくっているお姐さんたちが素敵でした。80年代、相当聴きこんでいたんでしょうね。

そういえば、たまたまカウンターで隣の席になった方と少しお話することができました。同年代と思しき彼女もまた、全米チャートでのブレイクをきっかけに聴き始めた Level 42 ファンということでしたが、その後はずいぶんハマって、過去に渋谷公会堂での来日公演も観ているそうです。米国よりは英国のサウンドがお好きということで、特に85~87年には名盤が多いと話されていました。曰く、Danny Wilson の2ndアルバムとか、Dream Academy とか…。こういうカジュアルなトークができるのもビルボードライブ東京という会場ならではの魅力だと思います。

さてさて、マークとマイク以外のメンバー3人の手堅い演奏も印象に残りました。特にピート・レイ・ビギンのキレのあるドラムスは一見の価値があります。ネイサン・キングのギターは奇を衒わず、オリジナルのソロを忠実に再現するもので好印象でした。ショーン・フリーマンのサックスもなかなか美味しいところを持っていく存在で、ソロの度に盛り上がりました。要所でネイサンと共にコーラスを重ねて厚みを加えてくれたのも忘れられません。

アンコールは今回の来日公演の基本曲目として用意されていた "Hot Water" ではなく、初期のインスト名曲 "Mr. Pink" をやってくれました。スラップベースのソロから始まる怒涛の灼熱ファンクにすっかりノックアウト。各メンバーのソロパートもフィーチャーしながら、間違いなく熱いのにどことなくクールな演奏なんですよね。これが彼らの真骨頂。全米ヒットシングルの2曲こそ大好きだったものの、決してバンド自体の熱心なファンとはいえなかった自分ですが、今回のライヴですっかり好きになってしまいました。Level Best 以外の音源もこれからじっくり聴いていこうと思います。

幸先のいいスタートになりました。今年もたくさんの素晴らしいコンサートに立ち会うことができますように。


【Level 42 セットリスト:2013年2月6日(水)1stステージ@ビルボードライブ東京】
1. Lessons in Love
2. Children Say
3. Running in The Family
4. It's Over
5. To Be With You Again
6. Two Soldiers
7. Fasion Fever
8. The Sleepwalkers
9. Freedom Someday

10. Starchild
11. Something About You

-Encore-
12. Mr. Pink


夢劇場の青い空
2013年01月18日 (金) * 編集
Dream Theater のアルバムのアートワークにも点数を付けてみようと思ったのですが、途中で挫折しました(ちなみに好きなアートワーク3枚と言われれば、I&WAwake8Vになります)。

その過程で、彼らのジャケットに青空が描かれているものが多いことに気がつきました。
これは単なる偶然なのでしょうか?

青空がはっきりと描かれている作品だけでも、

Images and Words(上部)
Awake(鏡の中)
Falling Into Infinity
Octavarium
Black Clouds and Silver Linings
(扉の向こう)
A Dramatic Turn of Events

の6枚があります。


偶然か、それとも意図したものか?

さらに、Train of Thought のジャケットはモノクロですが、真っ白に見える空は、実は雲のない晴天かもしれません。Systematic Chaos も、垂れ込めた雲の隙間から、一部青空がのぞいています。さらに言うと、ミニアルバムながら A Change of Seasons も青空の下のビーチですし、ベスト盤 Greatest Hit (...and 21 Other Cool Songs) も、荒天ながら左端に雲の切れ間があり、そこは明らかに青空になっています。

偶然にしては、あまりにも多いような気がしませんか?
何らかのメッセージが込められているのでしょうか。
希望とか、心の平穏とか、前向きなスタンスとか?

ジャケットに青空の占める割合の高いアルバム(FII8VADToE)は、サウンドも自分の好みに近いものが多いことにも気づきました。まあ、これはただの偶然だと思いますけど。


ラリー・フリーマントルのこと

それはさておき、8V 以降は Hugh Syme がアートワークを担当するようになっています。彼らが強く影響を受けた Rush を長らく手がけてきたアーティストですし、もちろん私も好きなのですが、個人的には I&W Awake でとてもいい仕事をした Larry Freemantle のアートワークを、もう一度見てみたい気がします。

幻想的で、イマジネーションが広がるイラストレーションは、少なくともあの頃のDTの音楽性とは非常にマッチしていました。また、アルバム中の各曲のモチーフを巧みに1枚の絵の中に取り込む手法により、アートワークとアルバム全体を一体化させる効果を上げていたと思います。「あの曲はここに使われてる!」とジャケットから探し出すのも楽しい謎解きでした(BC&SL で Hugh Syme も少しやってくれましたけど)。

…Larry Freemantle + DT。
もう叶わぬ夢なのかなあ。


終わりに

ところで、たった今気づいたのですが、BC&SLADToE はアートワーク的に連続性があるようにも見えますね。BC&SL で少年が開けた扉の向こうの青空の、遥か上空に ADToE の世界が広がっているように。

ADToE に続く新作のジャケットでは、どんな世界(と青空)を見せてくれるのでしょうか。

『ドン・フェルダー自伝 天国と地獄 イーグルスという人生』
2013年01月16日 (水) * 編集
ドン・フェルダー自伝 天国と地獄 イーグルスという人生最初に書いておきます。
イーグルス(The Eagles)というバンドの内情に特に興味がなく、イーグルスの音楽だけが好きな人は、この『ドン・フェルダー自伝 天国と地獄 イーグルスという人生』は読まなくてもいいです。いやむしろ、読まない方がよいとすら思います。

この手の自伝はどうしても暴露本的なものになりがちですが、これは特に痛烈な内容です。特に、グレン・フライ(Glenn Frey)とドン・ヘンリー(Don Henley)という、イーグルスの中心人物(そしてドン・フェルダー(Don Felder)を解雇した)2人に関する記述は容赦ないものになっています。

「innocence」という概念は、完全に不可逆のもので、いったん知ってしまったら二度と後戻りすることはできません。「むしろ知らなければよかった…」と思う事柄に人生の中でいくつか出会うことがありますが、この本の内容もそんなものの一つかもしれません。

それでもきっと、読まずにはいられない。
イーグルスファンの一人であるならば。


イーグルス加入まで

生い立ちから読んでいくと、ギターが大好きで真面目な若者だった彼は、始めからいわゆる「業界」のあり方とは相容れないタイプだったということがよくわかります。イーグルス加入以前、才能もあるし人当りも悪くないのに、あと一歩踏み出すことができない彼の優柔不断さには、読みながらいらいらするくらいです。その代わり、この時代には非常に印象的なエピソードが多々盛り込まれています。

たとえば、学生時代にスティーヴン・スティルス(Stephen Stills)とバンドを組んでいたこと。ギター・レッスンの講師時代の優秀な教え子に、トム・ペティ(Tom Petty)がいたこと。オールマン兄弟とよくつるんでおり、デュアン・オールマン(Duane Allman)からスライド・ギターの手ほどきを受けていたこと。クロスビー、スティルス&ナッシュ(Crosby, Stills & Nash)との交流、特にグラハム・ナッシュ(Graham Nash)の人のよさ。一方、コカインで朦朧とするクロスビー。中でも、親友となるバーニー・レドン(Bernie Leadon)と出会うエピソードは素晴らしい。読んだ誰もが彼のことを好きになるでしょう。

そんなレドンに口説かれて、フェルダーはフロリダから西海岸に移り、イーグルスに加入します。ツアー中に見たのはまさに Sex, Drugs & Rock'n'Roll の世界。例えばヘロインをキメ過ぎてほとんど死にそうなキース・リチャーズ(Keith Richards)や、毎晩代わる代わる訪れるグルーピーたちとのセックス。そんなツアーに同行して取材していたのが、ローリング・ストーン誌の若い記者で、これが何と当時まだ10代だったキャメロン・クロウ(Cameron Crowe)だったというのです。後に彼が監督することになる映画『あの頃、ペニー・レインと』(Almost Famous)での描写は、イーグルスのツアーの様子も参考にされているようです。


そして泥沼へ…

さて、イーグルスは元々は非常に民主的かつ平等なバンドでしたが、内部抗争の結果、フライとヘンリーが主導権を握って独裁化し、音楽性の違いからバーニーは脱退を選びます。後にランディ・マイズナー(Randy Meisner)も脱退することになるわけですが、この辺りのグレンとドンの凄まじいまでの横暴さといじめ、他のメンバーに対する理不尽な扱いについては目を覆いたくなるほどです。フェルダーが味わった屈辱は並大抵のものではなかったでしょう。ある程度は割り引いて読むべきだと思いますが、それにしても…と思わせる内容でした。

再結成後のイーグルスは、巨大な「金儲けマシン」と化しており、もはや誰にも歯止めが利かなくなってしまいました。フライとヘンリーが利益の大半を持っていく契約にいちいち疑問を差し挟むフェルダーは、煙たがられて結局途中で解雇されることになります。この頃のエピソードはもはや読むのが辛いくらいなのですが、一方で、同じ扱いを受けているジョー・ウォルシュ(Joe Walsh)やティモシー・B・シュミット(Timothy B. Schmit)は(少なくとも表面上は)黙々とプレイし続けています。フェルダーの正義感はこのことも許せないようで、あれこれ書いているのですが、ここは人それぞれと割り切るべきではなかったかと思います。

ウォルシュやシュミットは彼らなりに、ソロで稼ぐよりはるかに巨額のカネが入る「イーグルスのメンバー」というビジネスを続ける選択を、つまりフライとヘンリーに完全に牛耳られたままこの「金儲けマシン」についていく、という選択をしているわけです。プライドを完全にかなぐり捨てて。個人的には、これはこれで勇気ある選択だとも思います。そして「お金」が持つ力の恐ろしさも感じます。


終わりに

この本を読んで、特に初期イーグルスに顕著に感じられていた「カリフォルニアの爽やかな風」的なイメージは完全に吹き飛んでしまいました。80年代以降の各メンバーのソロ作品などにも思い入れがあるのですが、残念ながらこれまでと同じ気持ちで聴くことは難しくなりました。一度知ってしまったものは、もう知らない状態に戻すことはできないのです。ドン・ヘンリーが "The End of the Innocence" という曲を書いたことに、不思議な因縁を感じます。

しかし一方で、このドロドロさ加減こそが、彼らが(そして私たちも)人間であるということの証しであるのかもしれません。少々悲しいことですが…。

いずれにせよ、ドン・フェルダーが "Hotel California" という一世一代の大名曲をほとんど一人で作り上げたという事実は変わりません。歌詞こそドン・ヘンリーが書きましたが、アレンジも含めた楽曲の大半と、歴史に残るギターソロを残したフェルダーの偉業は、ロックファンの心に永遠に記憶に刻まれるでしょう。

そのことが、ほとんど唯一の救いです。

冬的DTアルバム評価
2013年01月14日 (月) * 編集
ADToE の評価が定まってきたところで、Dream Theater のフルレンスアルバムの現時点での個人的評価(10点満点)をメモしておきます。

1. When Dream and Day Unite 【7/10】
2. Images and Words 【10/10】
3. Awake 【10/10】
4. Falling Into Infinity 【8/10】
5. Metropolis Part 2: Scenes from a Memory 【6/10】
6. Six Degrees of Inner Turbulence【7/10】
7. Train of Thought 【8/10】
8. Octavarium 【8/10】
9. Systematic Chaos 【7/10】
10. Black Clouds & Silver Linings 【8/10】
11. Dramatic Turn of Events 【9/10】

Original Album Series: Dream TheatreWDaDU には良くも悪くも「若さ」を感じますね。現在のメンバーが最新の音で録音したらまた違う印象を持つのでしょうか。I&W は多くの皆さんと同様「人生を変えられた」アルバムです。よく言われるスネアドラムの音も含めて、個人的には丸ごと大好き。Awake は曲も録音も良くて、今でもよく聴きます。FII は人間くさいというか、どことなく温かい手触りが感じられる独特の音で、実はかなり好きだったりします。

SFAM は評価が高いようですが、個人的には実はそれほど聴いていません。何故だろう。無理に引き延ばした感があるのと、ストーリーにそれほど共感できないからかもしれません。6DoIT は全体として好きな音が詰まっているのですが、やはり少々長いです。ToT はメタリックで潔い。8V はバランス感覚が絶妙、アートワークも好きです。

SC は95年以来久々にツアーを観たこともあって嫌いではないのですが、やや重い印象はありますね。それに比べると、BC&SL は突き抜けた感があって、比較的歌えるメロディと複雑なインストがうまく結合しています。冗長な曲もありますが、良いアルバムだと思います。ADToE は個人的には Awake 以来の傑作となりました。

個人的には、この辺で一度外部プロデューサーに任せてみればいいのになと思います。手の内を知り尽くした同士から一歩離れて、客観的な目で見てもらう機会は(彼らが敬愛する Rush を引き合いに出すまでもなく)必要でしょう。他流試合をこなす中で、自分たちも気づかなかった新しいサウンドやアレンジが生まれるかもしれません。

いずれにせよ、以前、読者の方からコメントをいただいたように、聴き込むにつれてDTのアルバム評価はどんどん変わっていきます。最初とっつきにくかった作品が、後になってみると一生ものになることだってあるわけです。長く付き合えるアルバムが1枚、また1枚と増えていくことを、ファンとして嬉しく思っています。

ADToE Revisited
2013年01月10日 (木) * 編集
A DRAMATIC TURN OF EVENTS D2C BOX SETドリーム・シアター(Dream Theater)の Dramatic Turn of Events がリリースされてから1年半近くが経ちました。

リリース直後は音の変化に戸惑った部分もありましたが(ファーストインプレッションはこちら)、聴き込むにつれ、緻密に作り上げられた極めてバランスの良い作品であるとの印象を持つようになりました。


プレイヤー編

最も気に入っているのは、ジェイムズ・ラブリエ(James LaBrie)のヴォーカルパートです。実に伸び伸びと気持ちよさそうに歌っており、声に無理や破綻がありません。ヴォーカルクレジットはジェイムズだけになっており、脱退したマイク・ポートノイ(Mike Portnoy)だけでなく、ジョン・ペトルッチ(John Petrucci)もコーラスをやめています。ジェイムズ自身が声を重ねて録音しているわけですが、個人的にはこれが大正解に思えました。久々に「純ジェイムズ節」が堪能できるアルバムになっています。前作までは、マイキーからヴォーカルについて有形無形の様々なプレッシャーを受けていたのでしょう。制約から解き放たれ、自由に歌える喜びがアルバム全体から伝わってきます。

マイク・マンジーニ(Mike Mangini)のドラムスはこれまでとかなり異なる音作りで、最初のうちこそ若干の違和感がありましたが、聴けば聴くほどよく叩き込まれていることに気付いてハマっていきました。一時はドラムパートばかり聴いていたほどです。細部にわたって本当に巧い人ですね。ジョン・マイアング(John Myung)との息もぴったりで、リズムセクションとしてかっちりまとまっているように思います。今回のツアーは見逃してしまったのですが、次の来日公演こそはぜひ観てみたいものです。

ジョーダン・ルーデス(Jordan Rudess)のキーボードは、ストリングスや分厚いクワイヤ系の音色で空間を埋めている部分が印象に残りました。もちろん速いパッセージはたくさん盛り込まれており、ジョン・ペトルッチ(John Petrucci)との高速ユニゾンも健在です。アナログシンセ的な音もところどころ聴かれますね。ギターとベースの2人のジョンの音量バランスはここ数作では最も良いように思います。むしろアンディ・ウォレス(Andy Wallace)のミックスと、ペトルッチのプロデュースの手際を誉めるべきかもしれません。


楽曲編

全体として、歌メロの充実ぶりが際立っています。最近の彼らのアルバムには、一緒に歌いたくなるような覚えやすいメロディがやや少ない気がしていたので、今作での変化は嬉しい限り。バックトラックも歌メロから遊離することなく、バンドが一体となって曲を盛り上げていく感じがよく演出されています。

意外かもしれませんが、特に気に入っているのは "This Is The Life"、"Far From Heaven"、"Beneath The Surface" の3曲です。いずれもバラード系といえるスロー曲ですが、ジェイムズのヴォーカルがひときわ光っています。歌詞も個人的に非常に心に沁みるもので、何度も何度も読みました。大作系はいずれも聴きどころ満載で充実していますが、特に "On The Back of Angels" はグラミー賞にノミネートされてから聴き込んで、さらに好きになりました。今回のツアーを通して最も演奏された曲になりましたね。当初苦手だった "Breaking All Illusions" は "Far From Heaven" とセットで聴くようにして克服できました。

また、最初は I&W との類似性が耳について、どうしてこんなことをしちゃったんだろう?と思っていたのですが、聴き込むうちに、I&W とは外面的に似ていても全然違うことに気付きました。今となっては、彼らはこういう形で I&W にケリをつけたかったんじゃないかとさえ思います。私自身もあの時期のDTに格別の思い入れがあったわけですが、聴くたびに新たなスタートを感じさせるこのアルバムのおかげで、理想的な形で決別することができました。


終わりに

今後のDTの音楽には、これまでにも増してのめり込みそうです。Roadrunnerレーベルとの契約を更新して制作開始したという新作は、早ければ夏にも完成するのでしょうか。今から楽しみでたまりません。

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